長く続くヒット曲は生まれるか

このように細分化されたマーケットでは、誰もが知っている大ヒットは出にくい。しかし紅白は幅広い年代を楽しませることが前提で、なおかつその年にヒットを出した人が出場できる。だから誰もが知っている歌手がいない、ということになるのだ。これではヒット曲は小粒になるばかりかと思いきや、臼井さんによれば、意外にも息の長いヒットが増えているという。

「YouTubeがあれば、いつ発売されたかは関係ない。中島みゆきの22年前の『糸』や、宇多田ヒカルの15年前の『First Love』は、YouTubeで人気が再燃しています。長く愛されるヒットをつくりたいなら、原点に戻っていい曲をつくることです」(臼井氏)

日本の音楽マーケット史

NHK紅白歌合戦公式サイトより

▼1960年代
[おじさんマーケットの時代]
1968 青江三奈「伊勢佐木町ブルース」
1970 藤圭子「圭子の夢は夜ひらく」

▼1970年代
[アイドルvs実力派の時代]
1971 「スター誕生!」放映開始
1972 吉田拓郎、テレビ出演拒否

▼1980年代
[多様化するアイドルvsバンドの時代]
1981 松田聖子に財津和夫が曲提供
1985 おニャン子クラブ デビュー
1986~ バンドブーム(BOOWYなど)

▼1990年代
[タイアップの時代/カラオケの時代]
1991 CHAGE&ASKA「SAY YES」(ドラマ主題歌)大ヒット
[プロデューサーの時代]
1992 ビーイングブーム(ZARDなど)
1994 小室ブーム(安室奈美恵など)

▼2000年代
[CDvs音楽配信の時代]
2003 「着うた」が急速に拡大
2009 AKB48 初のオリコンチャート1位

※臼井氏への取材をもとに編集部作成

クイズの答え:A

臼井 孝(うすい・たかし)
音楽マーケッター。つのはず誠名義で雑誌やウェブサイトでの連載も行っている。
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