「誰でも知ってる曲」は、なぜ消えたか

「この人、誰?」「知らない」「こんな曲売れてたっけ?」

今年も紅白歌合戦を見ながら、こんな会話が交わされるはず。なぜ紅白の出場者はわれわれの知らない歌手ばかりになったのか。音楽アナリストの臼井孝さんに聞いてみた。

「昔の歌謡曲は中高年向けでした。若者はついていくしかなかった。でもだからこそ、どの世代にも共通のヒット曲が成立した。しかし70年代になると、若者が自分を投影できる同年代のアイドルが誕生します」

歴史クイズ(正解は本文最後に)

やがてヒットの条件は、その都度変化していく。そして現在は、CDを買わなくても音楽を楽しめる「音楽配信の時代」。CDの売上枚数以外にも、ダウンロードやYouTubeの再生回数など、ヒットの基準が複数存在する。臼井さんはこれらのランキングとCDの売上ランキングの乖離が激しいと言う。

「いま、CDはたくさんの人に買ってもらうのではなく、一人にどれだけたくさん買わせるかを競っています。代表的なのがAKB48の握手券付きCDですね。ジャニーズのタレントも、ジャケ写違い、特典付きなど、1曲につき何種類も出している。だからいまのオリコンのランキング上位は、秋元康プロデュースグループと、ジャニーズグループで占められています」

一方で、「千の風になって」(秋川雅史)、「愛のままで」(秋元順子)など、大人向けのヒット曲も目立つ。これらも「紅白で初めて聴いた」という人が多い。しかし臼井さんによれば、これらの曲は「NHK歌謡コンサート」で頻繁に歌われており、紅白出場を機にメガヒットに結びついているのだ。いわばこのあたりはNHKが開拓した「大人マーケット」。高齢世代に大人気なのである。