『がんが自然に治る生き方』は2014年、フリーライターの長田美穂さんが訳したことで、日本にも広く紹介されることとなりました。
長田さん自身、原著者の論文に出会って励まされ、1人でも多くの日本の方々へ、特に今がんを患っている方へ「治癒へのスイッチ」の入れ方を伝えたくて、日本語訳を自分にやらせてほしいとケリーさんに申し出たそうです。

がんからの生還者「サバイバー」は意外と多い

がんは病期が進むと、事態は少々「やっかい」になります。「やっかい」になるというのは、「治らない」という意味では決してありません。

「サバイバー」(がんからの生還者)は、探せば意外に多いものです。彼らのように、がんを治す方法はあるのですが、治し方が一様でなくなるため、「治癒へのスイッチ」が入りにくくなるのです。

つまり、自分に合った治し方を、自分自身で気付かなくてはいけなくなるのです。このため、治癒へのハードルは高くなります。なかなか気付けないので、多くの方は焦って不安や恐怖にさいなまれ、くじけそうになってしまいます。そこをうまく切り抜け、「治癒へのスイッチ」をオンするヒントがこの本には詰まっています。

医師、医学博士 岡本裕氏

今の医療は、よくも悪くも「医師主体」です。本来は医療の主役であるべき患者さんの希望や思いは、顧みられることがないのが現実です。そもそも、がんをはじめとする慢性疾患は、けがや感染症とは異なり、自身の生活習慣やストレスが大きな要因となって、慢性的に自己治癒力を低下させ、病気となって現れていることも少なくありません。つまり自身の生き方の総決算が病気となって現れている可能性があるのです。

したがって、原因は個人によって異なり、そのため治療方法も個々人によって異なるのです。今までの生き方を変えるという点では共通していますが、個々の原因を丹念に探り当て、逐一解消していく作業が治療には必要です。また人はそれぞれ遺伝背景も異なるため、「お仕着せの標準治療でがんが治るはずもない」というのが、私の見解です。

何より「自分自身が医療の主役である」という認識が大事です。「医師にすべてお任せして病気を治してもらおう」という発想は直ちに捨てるべきです。医師に依存したために命を失った患者さんを私たちは嫌というほど数多く見てきました。しかし「医師にすべてお任せして治った」という患者さんをほとんど見たことがありません。

主体的な姿勢こそが治癒をもたらすことは、サバイバーの教える1つの大事なポイントです。

もちろん、主体性を保つためには、自助努力も不可欠になります。ある程度の医学知識は習得しておく必要がありますし、最終的な判断も自身で行う必要があります。また自身の現状を常に把握しておくことも必要です。

リンパ球数の変化、腫瘍マーカーの変化、症状の変化(体重、体温、不定愁訴)などの検査で、大まかな病態は把握することができます。