「本当のことを知ること」は希望となる

今社会に求められていることは、医学の進歩はもちろんのこと、広い視野で治療方法を考えることのできる多くの医師と、多くのサバイバーたちによる情報の発信活動です。この医師たちとサバイバーたちとの協働ネットワークを日本全国まであまねく構築することができれば、がん患者さんが迷いや不安をおぼえることなく、的確な医師とサバイバーに容易にアクセスすることができ、納得して有効な治療を受けることが可能になります。

また、それと同時に、混乱や誤りに満ちた今日の医療健康情報を是正し、弱者の視点に立った疾病予防システムを作り上げることも可能になるはずです。がん患者さんにとって、一番の希望の星は、同じ病気、同じ病期から治ったサバイバーたちです。私たちが運営するウェブサイト「e-クリニック」も、サバイバーを数多く輩出していくよう日々努力しています。サバイバーを数多く生み出すことが多くのがん患者さんへの福音になることでしょう。

世の中を見回してみてください。テレビドラマや小説、映画などでがんが主題として扱われる場合、どれも画一的に「最終的にがん患者が亡くなる」という結末ばかりです。「最後に別れがあるストーリー設定のほうが、視聴率が取れたり、ヒットするから」というのがその理由だそうです。とはいえ、がんから生還したサバイバーのような存在もいるのですから、情報としては不正確で実態を反映していないと言わざるをえません。

『がんが自然に治る生き方』(ケリー・ターナー著 プレジデント社)

がんの治療は少しばかり長い時間を要します。まさに総力戦であり、持久戦です。闘い抜くためには、サバイバー、家族、同志など、心の支えになる人たちがどうしても必要です。特に気の合うサバイバーは、患者会などに参加して、ぜひ早めに見つけてほしいと思います。自分と同じ病気で、同じ病期かもっと深刻な病期から治った方がそばにいれば、これほど心強いことはありません。

私が本書を強くおすすめしたい理由は、「本当のことを知ること」が、間違いなく1つの希望となるからです。

治療を提供し、闘病に伴走する医師という立場から言うと患者さんが「希望を失うこと」が一番悔しいことなのです。

なかでも、がんの告知を受けたばかりの人で、落ち込んだり、2次作用としてうつなどの心の病気にかかる人も少なくありません。「どこかに道はある」そう思い続けてほしいのです。

その道が何であるかは人それぞれ異なります。ですが私は、がんを抱える患者さん本人やご家族のもれなく全員に、道を探し続けるよう助言をしています。