カナダのGDPに匹敵する関西圏の経済力

もともと大阪都構想は、大阪市だけに限った統治機構改革ではない。堺市など周辺自治体に枠組みを広げ、さらには「関西道」のような広域行政区域を遠く見据えて構想されている。つまり最終目標は道州制なのだ。兵庫、大阪、京都、奈良、和歌山を一体とした関西広域連合「関西道」の必要性を私は20年以上前から説いてきた。これは関西経済連合会や松下幸之助翁が唱えていた「関西府県連合」とも軌を一にする関西の悲願でもある。GDP規模でいえば、関西道はカナダに匹敵して、立派に一国を張れる経済力であり、G7にも参加できる規模である。

歴史的な観光資源は他の追随を許さないし、神戸や京都には世界的な企業が多い。アカデミズムや文化の発信地としては大阪、京都、奈良にまたがる京阪奈丘陵には関西文化学術研究都市(学研都市)もある。大阪・梅田界隈はニューヨークやシカゴ、ロンドンと並ぶ世界有数の商業集積地で、富裕層の財布の大きさはアジアトップクラスだ。縦断して4時間、横切って1時間半程度のコンパクトなエリアに、カナダと同程度の経済力が充填され、要衝がバランスよく配置されている。いまは東京一極集中の陰に隠れているが、関西圏というのは世界的にも非常にポテンシャルが高い魅力溢れる地域なのだ。

そこに道州制を持ち込んで広域行政区域とし、国から三権(立法、行政、司法)を分捕ってくるのが私の関西道構想であり、道州制論者である橋下市長もそのことはよくわかっていた。

従軍慰安婦などの議論で場外乱闘する橋下氏に「旗がどこにあるか見えているのか?」とメールしたときに「憲法第8章、95条です」と即答してきた。つまりマスコミに翻弄されながらも地方自治を是正していく、という彼の初志、本丸の姿、は見失っていなかった、ということだ。しかし、そうした大きなビジョン、要するに今回の選挙の直接対象となった大阪都構想の外側に何があるかということを、橋下市長は住民投票期間中に示せなかった。あるいは堺市に逃げられて、示したくても示せなかったのかもしれない。争点となった大阪都の次に何が続いているのかの長期的ビジョンを語らなかったことが最大の敗因だった。

「我々の最終目標は道州制の実現であり、オール関西の広域連合をつくりあげることです。関西が一つになれば経済規模はカナダに匹敵するし、世が世ならG7にだって参加できる。その夢のファーストステップが今回の大阪都構想なのです。私の不徳の致すところで、堺市は不参加になりましたが、この大阪の地で都構想を先行させたい。その素晴らしさを皆さんに示すことができたなら、いずれ堺の人たちも『一緒にやろう』と言ってくれるでしょう。関西の大発展に向けた大事な第一歩をここから踏み出しましょう」

こうしたアピールをしていれば、住民投票の1万票差から判断しても圧勝していたに違いない。「負けは負け」ではなかった、というのが私の判断である。