デート、接待の前の必読の書
もう一つ、「女性の引き立て方……」もご紹介。女性とのデートはもちろん、接待でも相手が女性であることは今やフツーのこと。フレンチなら、入店の際から男性が女性を立てる行動が大事だということは、今さら言うことではない。ところが、日本料理の店や旅館などでは逆が正しい所作だそう。男性が先に暖簾をくぐり、上座に座るのが和のしつらいだそうだ。でも、接待でそんなわけにはいかない、と思ったら、予約時に接待相手は女性だと伝えておくと、よりスムーズだと書かれている。いや~、勉強になる!
それもそのはず、著者の商品ジャーナリスト、北村森氏は元日経トレンディ編集長。見出しで引き付けるセンスもバツグンだ。しかも、中身はそれぞれが自らの経験を基に書いてあるのだから、説得力は十分なものとなっている。
かつて、日経トレンディ時代は、ホテルの覆面調査や京都や東京の一流店などを取材してきた。難攻不落の老舗割烹や高級鮨店などへは何度も通い詰め、お店との信頼関係を築いてから取材の承諾を得て、他誌やテレビ関係者は何度も地団駄を踏んだ。
その彼が今回、「所作」という言葉を選んだ。スマホやiPadが巷に溢れ、公の場でのマナーや振る舞いが大きく変わってきている現代において、実はこの「所作」が大きく見直されるべき時期に来ているのではないか、そう感じていた矢先、この本に出会ったのだ。
メイドイン・ジャパンが注目され、「おもてなし」が持て囃され、ニッポン再浮上に沸き上がる世相に違和感を感じる今日この頃。それでもこの国の行方を案じるとき、そのときどきのムーブメントや風潮に流されないためには、個々人が確固たる所作を備える必要があるのではないか。そんなことを考えれば考えるほど、この本の重要性はひときわ大きく感じてくる。もちろん、若い皆さんにはデートの前に、多くの社会人の方々には接待前に読んでおくべき書であることは言うまでもない。