食事のとき、何気ないクセや思いこみで相手を不愉快にさせていないだろうか。マナーとは、相手と気持ちよく食事をするための手段であり、おいしく食べ進めるための合理的な手段でもある。一流店の作法を覗いてみよう。
会食や、大事な接待、大切な女性とのデート。ここぞという場面で、どう振る舞えば相手にも店に対しても失礼にならないか。なんとなく、わかっているようでいても、改めて聞くと気づかされることも多い。懐石の「辻留」、寿司の「久兵衛」、フレンチの「アピシウス」という日本を代表する名店に、気をつけたいことを聞いた。
まずしておきたいのが、予約段階での店との相談である。何日の何時に何名で、という一般的な必要事項だけでなく、利用目的に予算やメニュー内容の確認など、こちら側の情報や希望を伝えて擦り合わせをしておくと、当日、よりスムーズに事を運ぶことができる。
「コースによって品数が変わりますから、あまりたくさん食べない方なら、安いコースで十分です。苦手なものや好みも事前に伝えてもらえればそれに合わせて準備できます」(「辻留」辻義一さん)
「今はホームページをつくっている店も多いですから、予約の前にそこである程度の情報を得てもらって、後は実際の予約時にわからないことを聞いてもらえるといいですね。鮨懐石のようなコースにするのか、それともお決まりで握りだけにするのかなど、予算に応じたメニューの相談も、どんどんしてください。そこでどんな応対をするかで、その店のサービスの一面も見ることができます」(「久兵衛」今田景久さん)
「初来店のお客様が接待に使われるときなどは、かなり綿密な打ち合わせをします。企業のトップは、後の予定が詰まっていることも多いですから、予算や内容、好き嫌いの情報以外にも、料理出しのタイミングや終了時間まで、事細かな連絡がある場合もあります。わかる範囲で構わないので、そうした情報や相談をいただけると、こちらもサービスがしやすいです」(「アピシウス」永井利幸さん)
まずは店側をこちらのブレーンとして引き込んでしまうくらいの心構えが、大事な接待を成功させるための第一の鍵といえる。では当日、懐石、寿司、フレンチのジャンルごとに、具体的に気をつけたいのは、どんなことだろう。