望むと望まざるとにかかわらず、仕事で海外に出る日本人は増えている。ビジネス成功のためにも、ぜひ世界で通用するマナーをマスターしておきたい。
モナコのホテルで、日本のある有名な経済人の方がロビーラウンジに入ろうとしたところ、席が空いているのに断られたそうです。なぜでしょうか。それはその方が入り口の前で、大声で話していたからです。ロビーは、ホテルの顔。国際社会では一歩外に出たら、自分もその場をつくる一員としてふるまわなければいけないのに、その意識に欠けており、一流ホテルに入るのにふさわしくない方とみなされてしまったのです。
国際社会においては、さまざまな人種、宗教、文化、慣習の中に身を置くことになります。そこで異なる背景の人同士が円滑に交流するため、世界共通のルールとして存在しているのが、国際儀礼(プロトコール)なのです。何か特別なことをする必要があるように思われるかもしれませんが、心がけるのは相手に好感を持たれること。つまり、相手の感情を害さないようにふるまえば、大きな間違いは起きないでしょう。
どんなマナーでもお国柄や宗教によって異なりますので、一番適している方法を事前にお調べになるとよいと思います。国際儀礼を守る一方で、マナーの基本になる態度は「郷に入れば郷に従え」。国際ビジネスの第一歩は、その国の文化に敬意を払うことです。欧米のエグゼクティブの方々が来日する際は、お辞儀の仕方からお箸の使い方まで、一通り調べてこられることも少なくありません。逆にろくに調べてない相手に対しては「準備を怠っている人物が働く企業のレベルは低い」と判断され、ビジネスに支障が起きる可能性もあるので気をつけたいところです。
握手は上位者から下位者へ手を差し出すのが基本ルール。仕事では男性が女性に握手を求めても問題ありません。ただし、女性の体には気軽に触れないように気をつけましょう。
会話についても上位者から話題を提供することがルールになります。比較的好まれるのは、健康の話題。グローバルなエグゼクティブが必ず身につけておくべきたしなみが、お酒に飲まれない「アルコール(alcohol)」、健康を管理する「コレステロール(cholesterol)」、国際儀礼の「プロトコール(protocol)」の「3OL」と言われているくらいです。また、海外では文化的な話に及ぶ機会が多く、ヨーロッパ圏でシェイクスピアとマザーグースに関する教養は必須。自分の国の文化について語れない方は、最も軽視されます。