中国の巨大市場を虎視眈々と狙う
30年以上のロングセラーブランドであることからもわかるように、キャビンとキャスターは日本人の嗜好に合った製品である。日本人に近い嗜好を持つアジア地域の喫煙者に受け入れられる可能性はある。少なくともウィンストンよりは受け入れられるだろうとJTは踏んだ。
問題は売り方だ。アジア地域で販売されていないキャビンとキャスターの認知度は低い。一方、グローバルブランドのウィンストンの認知度はそれなりにある。そうであれば、キャビンとキャスターをウィンストンに統合し、ウィンストンのブランドバリエーションを広げて販売した方が売りやすいと考えたわけだ。
なお、JTグループがアジア地域に注力する理由はほかにもある。現在、専売制を敷いているため参入することができない中国市場を見据えているのだ。中国は世界のタバコ販売数量の40%を占めており、1兆5000億円の市場があるというのである。この巨大市場で海外のタバコメーカーの参入が自由化されるときが来るのを待ち、周到な準備を行っておくというわけだ。
今後、キャビンとキャスターは、味と香りをそのままにしてウィンストンの名称を冠することになる。日本市場においては、2015年8月上旬からブランド名を「ウィンストン・キャビン」「ウィンストン・XS・キャスター」へと順次切り替え、2015年10月中旬から全世界統一の新デザインへと刷新するという。
「まずは日本市場において一層のプレゼンスを高めていくこと、そしてシェアを拡大していく。それを梃子にしてアジア地域における新規市場の開拓、拡大につなげていくという戦略だ」(小泉社長)
日本国内でキャビンとキャスター、ウィンストンを合計したJT社内シェアは10%を超えるという。決して少ない数字ではない。日本の顧客がブランドを統合した後もキャビンとキャスターを吸い続けてくれるのか。JTグループの海外戦略が成功するかどうかの試金石は、ブランド名を切り替える今年の夏にあるといえるだろう。