JTの奇襲は成功するか

日本たばこ産業(JT)は、2015年5月、日本国内で30年以上にわたるロングセラーブランドである「キャビン」と「キャスター」を、「ウィンストン」ブランドに統合することを発表した。

小泉光臣・日本たばこ産業(JT)社長。

その理由は、JTグループの海外事業戦略にある。同グループは1999年のRJRインターナショナルや、2007年のギャラハーをはじめとした数々のM&Aにより、ウィンストンや「キャメル」「LD」などといったグローバルでメジャーなブランドを手に入れた。それより、同グループは「15年間にわたり年平均2桁という業界最速の利益成長を継続することができた」(小泉光臣・JT社長)という。

この成長を支えたのが、欧州やロシア周辺地域でのビジネスの成功である。これらの地域で一定のシェアを獲得できたことがJTグループの成長を牽引した。だが、いつまでも成長が続くわけではない。一定のシェアを獲得したということは、欧州やロシア周辺地域でのビジネスが一服したとも考えられる。

そこでJTグループが次のターゲットに定めたのが、同社のシェアが低いアジア地域である。実際、2014年にはカンボジアやインドネシア、マレーシアをはじめとするアジア15地域に、グローバルナンバー2ブランドのウィンストンを投入し、それらの地域でのJT製品の販売数量を対前年比12%増加させることに成功している。

もともとウィンストンは西洋人向けに作られた製品であり、アジア人の嗜好にマッチしているとは言いがたい。日本国内でのウィンストンの人気がそれほど高くないことを考えれば、それもうなずける。

そこでJTは奇襲攻撃に出た。日本市場で人気ブランドであるキャビンとキャスターをウィンストンに統合するというのだ。