広報を通じてではなくリーダーが直接話す

リーダーの言葉は、リーダーから社員、顧客、投資家、ときには一般大衆にいたる主要なステークホルダーに対して出される大切なメッセージである。メッセージを伝達する形態は電子メール、1対1の会話、あるいは何千もの人を対象とするスピーチなどさまざまなものがある。

リーダーの言ったことすべてがリーダーシップを発揮するためのコミュニケーションとは限らない。単なる事務事項と「リーダーシップ・コミュニケーション」を区別するには、伝達すべき内容が企業文化と価値観に根ざしているか、ビジョン、使命感、変革のあり方を示しているか、そして必要な行動を喚起するものであるか、を考えてみればいい。

健全でオープンなコミュニケーションのある職場では、社員は目的やゴールをはっきりと持って生き生きと働いている。それは、リーダーが彼らに組織の目的やゴールをきちんと伝えているからだ。その逆の事態もある。社員に会社がどちらを向いているのか伝えていなければ、次に何が起きるか誰もわからないので、社員は、自分の殻に篭もってしまう。

「組織のトップも末端の社員も、あなたの戦略を理解していないとすれば、戦略自体が存在しないからであろう」。スイスにある国際経営開発研究所(IMD)の教授であり、ミシガン州のデニソン・コンサルティング社の会長を務めるダニエル・デニソンの弁である。デニソンは、過去20年間、企業文化およびリーダーシップが業績といかに密接に関連しているかについて研究してきた。

「企業はCEOの価値観とビジョンを伝えるために実に多くの時間を費やすが、それが正しく伝わったか確認するための時間はわずかしか割かない。これは驚きだ」と彼は言う。

リーダーは組織と社員にとって何が有益か、を語ることにより企業文化に意味づけをする。つまり、リーダーは「全員にとってよいこと」を「聞き手それぞれにとってよいこと」につなげるように語らなくてはならない。リーダーが発信するメッセージは、社員の忠誠心を勝ち取るとともに、リーダーと社員の間に信頼の絆をつくるためのものだからだ。