好調時でさえ、リーダーが時間を無駄にすることは許されない。

不調時のリーダーは、着任する前から時計の針は動いている。就任初期の印象、成功、および挫折は、あなたの評価にとてつもなく大きな影響を与えるからだ。

最初の100日が勝負である

2000年12月、ホーム・デポの最高経営責任者に着任したロバート・ナーデリは怒濤の数週間を過ごしていた。同社アトランタ支部の幹部との3日にわたる会議に続いて、8日間で8都市の店長と面談、そして南米に飛び、従業員、販売人、契約人との会議を立て続けにこなした。続く2、3カ月間に、可能な限り多くの店舗を回り、管理職クラス数人の雇用と、5人の経営幹部の配置替えを行った。また組織改革により、同社の米国オペレーションのトップをCEO直轄とした。

なぜこんな猛スピードでことを運んだのか?

ナーデリを迎えたころのホーム・デポは、15年ぶりに四半期売り上げの下落に見舞われていたものの、会社の立て直しが必要というほどではなかった。しかし、ナーデリは、会社が不振になるまで待つ気などさらさらなかったのだ。

「リーダーシップ改造」(Leadership Transitions)というオンライン学習教材の製作者であり、ハーバード・ビジネス・スクールの助教授でもあるマイケル・ワトキンスは、従業員のやる気を引き出し、重要な課題に集中的に取り組むには、就任直後の半年が勝負、と指摘する。ルーズベルト大統領の最初の政権をモデルに、任期中のスタイルを定着させるには最初の100日が肝心とする説もある。

ハーバード・ビジネス・スクール教授のジョン・コッターは言う。

「もし26歳で、安定した大企業で将来の約束されたリーダーの地位に初めて就いたのなら、いろいろと策をめぐらす余裕もあるだろう。しかし、企業の業績がボロボロで、緊急処置を必要としていたら、(最初の)100日は大いなる賭けだ」

 新管理職に与えられる時間は、昨今、さらに短くなっている。1996年の名著『Leading Change』でコッターは本格的な変革が完成するには7年かかると述べたが、最近では3年、と改めている。再建中の企業であればさらに短い。ベイン&カンパニーの調査によれば、ここ10年では、立て直しに成功した企業は20カ月以内にV字回復を成し遂げているという。

ただ、企業が瀕死の状態にないのなら、新しくトップに就いた人間は、可能な限り意思決定の迅速化を図りつつ、いくつかのチェックポイントを念頭に置いて行動すべきである。成果を挙げたいばかりに全方面に攻撃を浴びせれば、重要な戦友まで敵に回してしまう。以下は、大事な人材を造反させることなく、機敏に改革を実践するためのヒントである。