自信過剰は失墜の引き金になる

[3]すべての答えを前もって用意しない

「すべて1人でできる」という自信過剰は、失墜の引き金になりかねない。「できる」リーダーが、突如舞台に躍り出て財務データを並べ立て、前もって用意しておいた特効薬がいかに有効かを言い立てる。これはまさしく犯しやすい過ちである。

「こうした罠に陥ってしまうのは、傲慢と不安、あるいは毅然たる態度を示さなくては、という思い込みのせいだ」と前出のワトキンスは指摘する。

ロバート・A・エッカートはカリフォルニアに本拠を置く玩具メーカー、マテル社の会長兼CEOに就任して間もなく気づいたことがある。「自分がこの会社の従業員と風土についての知識を欠いていることを自覚し、ある面では従業員にボスになってもらったのだ。これがリーダーシップを発揮するのに役に立った」。

就任当時、エッカートは2、3のポジションに元同僚を配置しようとした。しかし、そうしなくてよかったと考えている。「人に与える印象とアイデア、そして問題に取り組むときの態度」など、アドバイザーのネットワークから得られる視点は、「初期の重要な決断をするときには、財務データの分析などよりずっと役に立つ」とワトキンスは主張する。「孤立こそ最大の敵だ」。

[4]人心を動かす短期の成果を重視する

初期の成功はさらに踏み込んだ改善を図る基盤となる。ゆえに、象徴的、および戦略的に意義があって、しかも短期で解決可能な問題から取り組むべきだ。たとえば、生産性を低下させているボトルネック、採用の滞り、まずいインセンティブ制度などだ。

ジョン・ガーヴィス(クリエイティブ・リーダーシップ・センター)は言う。「1つひとつの挑戦がさらに困難な挑戦への準備になり、チームの成功だけでなく、自分の将来の成功の土台を築いてくれる」。

※参考文献
『Leading Change』 John Kotter (1996年)
『Right from the Start』 Michael Watkins and Dan Ciampa (1999年)

(翻訳=ディプロマット)