「脳のアイドリング」で情報整理

ジョブズのウォーキングミーティングをはじめ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグやツイッターの創業者ジャック・ドーシーなど経営者らが、歩きながらのミーティングを実践している。もちろん、忙しいことによる面もあるが、より発想を促せる効果もあるからだ。ジョブズの場合は、禅の影響も考えられるだろう。

たとえば禅には“歩行禅”という、心を無の状態にして10分から20分程度歩く方法がある。これで脳の中のさまざまな情報が整理され、気にかかっていることなどが解きほぐされる効果が期待できるという。

茂木健一郎氏は一昨年開催されたプレジデントフォーラムで、「歩くことの効用の一つは、Default mode networkが活動すること」と話されていた。デフォルト・モード・ネットワークとは、人間が世の中の出来事や何かの目的、文脈などにとらわれることなく活動する場合に働く神経回路のこと。無になって歩くことで、脳が動力を伝えることなく空回りするアイドリング状態になって、メンテナンスが進む。すると、ストレスの要因となるさまざまなゆがみが整理、解消されていくという。これによって、考え方や視野がリセットされて新しいアイデアが生まれやすくなるのだ。

たとえばジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社で、健康増進・生産性向上などで企業社員をサポートするコンサルティング会社ウェルネス・アンド・プリベンションという企業がある。ここでは、生産性を挙げる方法として、30分に1回立ち上がって1、2分歩き回ることを推奨している。

体を動かし始めた直後の1、2分の間には心拍数が少し増加することによって、より多くの酸素が脳に届けられるという。この方法を3カ月試した人は、エネルギッシュになり、集中力が増し、仕事に取り組む意欲もあがったとの報告も見られる。もちろん、歩きながら資料を読むことも効果的というわけだ。

さて、この記事を読まれている方も、最後まで読み切る前に立ちあがって、ぜひ歩いてみていただきたい。かくいう私も、ここまでずいぶんと座りっぱなしになってしまった。一度歩き回って酸素を取り入れて、次の仕事に取り掛かることにしよう。3カ月のちに、集中力が増し、仕事に取り組む意欲もよりあがっていることを期待して。

[脚注・参考資料]
Nilofer Merchant, Got a meeting? Take a walk, TED, Filmed Feb. 2013
Stanford News, Apr. 2014, Stanford study finds walking improves creativity, By May Wong
CNN, GMT March 2013, Let's take a walk: A push for meetings on the move, By Vanessa Ko