オフィスの雑音で、生産性1/3にダウン
集中して仕事をしたいとき、何が気になるだろうか? 雑然とした机上、暑すぎ寒すぎの空調、それから電話や雑談などの音かもしれない。背の低いパーティションで区切られた程度のオフィスは、仲間の顔が見えて意思疎通がはかりやすい。互いに会話がしやすいから新しいアイデアも生まれやすくなり、協力しあう体制が整いやすいはずだ。
ところが、会話は増えても雑談や表面的なものが多く、短い時間ですませる傾向がみられるという。なぜなら、もちろん周りの人が耳をそばだてているからだ。少しでも深い話になると、ミーティングルームに移るなど場所を変えることになる。結果として、ほかの人の電話、会話、タイピング音など、さまざまな集中力を妨げる音ばかりが目立つことになってしまう。
サウンドコンサルタントのジュリアン・トレジャー氏は、音が人に与える影響を、大きく4つに分けている。
1. 生理的影響:人間のホルモン分泌、呼吸や心拍数、脳波などに影響を与える。
例:警報ベル、アラーム音など
2. 心理的影響:感情に直接の影響を及ぼすため、もっとも強力な手段となる音。
例:音楽
3. 認知機能への影響:複雑な音を聞き分けるなど、集中して音を選ぶ必要があるとき。
例:ふたりで同時に話す声、騒音の中から知人の声を聞き分けるなど
4. 行動面への影響:人は不快な音を避け 快適な音を求める(騒音から逃れられない場合、著しく健康を損ねる)。
例:工事の音などを不快に感じると、数分で部屋を出て行く。
人が聴覚で処理できる帯域は限られているために、冒頭に挙げたオフィスの雑音といったノイズがあるときには、生産性が著しく低下して、静かな部屋のときと比べた生産性は1/3に落ちてしまうという。
ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー誌に掲載されたこんな実験がある。オープンオフィスの環境を再現し、40名の事務職の女性を「低レベルの音」に3時間さらし、別のグループは3時間静かな環境で過ごし、パズルを解くというものだ。静かな環境にいた被験者は、熱心にパズルを解いたのに対して、雑音の環境に置かれた被験者はパズルに数回挑戦しただけであきらめたという。また、仲間が「ちょっといい?」と一言声をかけるだけで、その集中力を戻すのに23分かかるというデータもあるなど、音がどれほど人の集中力を妨げるかがわかるだろう。
こうしたオープンオフィスのような環境下で働くときには、ヘッドホンをつけて鳥の鳴き声などのα波を出すようなリラックスできる音を聞くと、生産性は元の3倍にまで戻るとトレジャー氏は話す。
では、リラックスして仕事の作業効率があげるために、ほかにはどんな音や音楽があるだろうか。