平均睡眠時間を上回る、座りっぱなし時間の弊害

「今この瞬間にしていることが、寿命を縮めています」

アップルなど多くのIT企業で働き、経営幹部も務めたニロファー・マーチャントは、プレゼンでこんな風に問題を提議した。今この記事を読む瞬間にしていることとは……多くの方はあてはまるであろう“座る”こと。あるデータによると、人は1日の平均睡眠時間を7.7時間として、それを上回る9.3時間を座って過ごしているという。座っていることによって癌、心臓病、糖尿病などの発症率が高まるという統計もみられるというのだ。

マーチャント氏は、あるとき会議室でのミーティングに都合がつかなかったことから、「犬の散歩の時間に来て欲しい」と言われ、歩きながらミーティングを行った。すると、歩くことで違った世界が見られるような感覚になり、さらには仕事と運動を両立する達成感を味わったという。体を動かすことが大切で、座り続けることは健康によくないのは誰もが知る事実ながら、新たな視野も開けるメリットもあるわけだ。さらに、最近では身体を動かすことが仕事でも勉強でも効果を表すとされている。

考えに行き詰まると、部屋などの“箱”から出ることで、新鮮な発想ができるような感覚を覚えることがあるだろう。物理的な“枠”を取り外すことで、自然に関係のない情報までが自分の視覚・聴覚から入ってきて刺激を受けるからだ。すると、会議室では取り払えない決まった枠組みから飛び出して、いろいろな分野の情報が結びつき、新しい発想が生まれてくる。今までと違った角度から物事を見て、考えて、新たなフレームで物事を考えるようになるはずだ。

ところが……実は、外であろうと中であろうと、“歩く”ことさえすれば、さしたる違いはないという実験結果もみられるようになった。