どの会社に勤めるのかは市場選択の問題
会社に不満があったとしても、自身が富を生み出す資産と考えるならば、ただ不満に思っていてはダメである。自分を企業に見立て、rを向上させるための手段を模索する必要がある。現時点でのビジネス(今の仕事)は最小限にし、空いた時間を副業(新規事業)に費やしたほうが全体の収益率が高まるかもしれないし、場合によっては市場を変える、つまり転職を検討する必要も出てくるだろう。逆に、多少、不満があったとしても、他の市場(別の仕事)より相対的に有利と判断できるなら、そこに居続けるのがベストだ。これは、正しい、正しくないの問題ではなく、市場選択の問題なのである。
アフター5の付き合い方も同様である。仕事が終わった後の時間は、直接労働には関係しない。しかし、どのような人と、どのような付き合い方をするのかで、将来の人脈や年収が大きく変わってくるはずである。つまりアフター5の過ごし方は、rの部分に効いてくるのだ。
自宅の購入にもrの視点を
資産拡大という視点があれば、住む家に対する価値観も変わってくる。
筆者の知人は、築年はそれほど新しくないが、ゴミ置き場に段差なしで行くことができ、共用スペースが広い中古マンションを購入した。古いマンションは、スペースにゆとりがある構造になっていることが多いのだが、こうした環境は、高齢者が入居する場合において、非常に重要なポイントとなる。
今後は高齢化で入居者の多くが年配者になる状況を考えれば、多少築年数が古くても、こうした物件のほうが逆に資産価値を維持することができ、賃貸に回しても収益を確保できる可能性が高い。持ち家を購入するという行為でも、自分の希望だけを基準に物件を選択するのと、市場性を考えて物件を選択するのとでは、結果は雲泥の差となってくる。
一方で、利便性を最優先し、住宅は機能的な賃貸物件でよいという考え方もある。住宅はコストとして割り切り、仕事の効率を向上させ、収入を最大化させたほうが合理的という発想である。どちらがよいのかは、人それぞれであり、どちらを選択したのかはあまり大した問題ではない。こうした選択ができていることが重要なのであり、それはrの視点を持っていればこそである。
収入が上がっていけば、それに伴って貯蓄も増加していく。そうすれば、資産の運用から得られる収入や資産の時価総額も同時に増えていくだろう。このように、資産が継続的に拡大する仕組みをつくることができた人は、規模は小さくても、紛れもない資産家であり、ピケティが主張するところの、rの側に立つ人間ということになる。