r > gに対するマクロ的な解決策の一つは「国による富裕層への課税強化」である。では、“個人的”な解決策は、どのようなものになるだろうか。

フランスの経済学者トマ・ピケティが大ブームとなっている。彼の著書『21世紀の資本』は分厚い経済書であるにもかかわらず、米国を中心に、世界中で異例のベストセラーとなった。

『21世紀の資本』がこれほどの話題になったのは、ピケティが膨大な歴史データを駆使して、富を持つ人とそうでない人との格差が拡大しているという事実を明らかにしたからである。

ピケティは、格差を是正するにはどのような税制がよいのかという世界レベルの提言を行っており、日本におけるピケティ関連の議論も多くがこのあたりに集中している。こうした大きな話も重要だが、ピケティの主張が真実なのだとすると、私たちは、これからどのようにして、個人のキャリアや資産を形成していけばよいのだろうか。ここではそうした視点でピケティ理論を検証してみたいと思う。

資産からの収入は所得の増加を上回る

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ピケティ理論のエッセンスとなっているのは、r > gの法則と呼ばれているものである。ピケティによると、歴史的に、いつの時代も、資産の収益率(r)が所得の伸び(g)を上回っており、これによって富を持つ人とそうでない人の格差が拡大しているという。今後、世界経済の成長率鈍化により、格差拡大がさらに顕著になると予想している。

彼が説明する通り、資産を持っている人は、その資産を運用することでさらに富を増やすことができる。

例えば3億円の資金を持つ人であれば、債券や株式に投資することによって、年間で1000万~1800万円程度の収入を得ることが可能だ(一般的な期待リターンは債券が3.5%、株式が6%程度)。これは、世間でいうところの不労所得であり、自身が働いて得た収入とは別のものである。資産の保有者は、お金を減らすことなく、毎年、資産が生み出すお金で資産を増やせる仕組みになっている。