勝ちにいこうとせず、武装せず

そんな大場が目指している究極のセールスは『しゃべらない営業』だそうだ。ニコッと笑った瞬間に、「あ、こいつに全部任そう」という心・技・体すべて揃った空気をまとっている。10年後にはそんな領域まで到達したいと考えているという。

大場敏貴さん

「うまくいかない若手の営業マンって、その逆ではないでしょうか。相手を引き付けたいあまりに、その場で必要とされていない知識も総動員して、無理してしゃべっている。しかも、頼られようなんて思っているんじゃないですか。それって、経営者の方々にはおこがましい話で、よほどのモノを持っていないと、彼らから頼られるなんてことにはなりません。いろいろなことをしゃべるし、プライドも高い。だから『お願いします』の一言が素直に言えない」

勝ちにいこうなどと思わず、武装せず、そのまま素を出したほうがいい。相手の話を十二分に聴くことが大切、と大場は強調する。「当たり前ですが、お客さまが主役で、我々は最後までスペシャルな黒子、スター・ウォーズにたとえるとC-3PO、R2-D2です(笑)」とのこと。

「相手から生命保険のご契約をお預かりすることは私の仕事だし、いつなにが起こるかわからないので早く加入していただけるほうがお互いにハッピーなんです。でも、そこには大切なお金も絡むし人間同士だから損得とか好き嫌いとか、いろいろな殻をまとってお客さまは当然身構えてくる。若手の営業マンにはこう言うんですよ。『お前さ、たとえばサウナに入るとき、みんな裸なのに自分だけスーツ着ていたらヘンだよな。まずお前から脱がないと、向こうも脱いでくれないよ。パンツもなにもかも全部脱がないと、いい情報は入ってこないだろ』って。

若い人って、実は素の自分の中にあるその人にしかない個性や魅力に気付いていない人が多いのではないかと思います。人にはいろいろとチャームポイントがあるものですからね」

※本連載は書籍『アメリカ本国を驚愕させたプルデンシャル生命の「売る力」』からの抜粋です。
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