メリットさえあれば会う時間をつくるもの

営業格差が広がっている。顧客からひっきりなしに声がかかる多忙な営業担当者と、誰からも声がかからず、門前払いを食らわされる営業担当者の格差がますます広がっているのだ。

上位営業マンと下位営業マンの格差は14倍に!
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上位営業マンと下位営業マンの格差は14倍に!

弊社では2005年より、300社を対象に上位10%のトップセールスと下位10%の営業担当者の成績についてアンケート調査を実施してきた。その結果、05年時点で約8倍だったハイパフォーマーとローパフォーマーの差は、08年には14倍にまで大きくなっていることがわかった。営業担当者ごとの格差は年々広がり続けている。

さらに、一般営業担当者500人、トップセールス500人を対象に、ファーストアプローチ後、3カ月以内に成約する確率を調べたところ、一般営業担当者は成約に至った顧客が8.5%だったのに対し、トップセールスは29.4%の顧客が成約に至っていた。その差は3.5倍と、歴然とした数字になって表れている。

なぜこれほど格差が広がっているのだろうか。その理由として、ひとつには顧客が営業担当者に要求するレベルが驚くほど短期間で高まってきていることが挙げられる。顧客の要求に応じて変化し続ける営業担当者と、以前の営業スタイルを変えることのできない営業担当者の成果に大きな差が表れているのだ。

一昔前までは、迅速に対応をしてくれることが顧客にとっての価値だった。顧客が呼んだとき、その日のうちにすぐに訪問し、一生懸命に対応をしてくれる営業担当者が顧客から評価されていたのである。「自分の会社を第一優先してくれている」という実感が顧客の満足感につながっていた。しかし、いまではクイックレスポンスは大前提であり、取引の最低条件となっている。対応が早い、一生懸命やってくれるという理由だけで顧客は満足しない。それ以上の付加価値を求めているのだ。顧客の要求レベルの変化に気づき、何をすべきかを理解した営業担当者と、いまでも早さだけで勝負しようとする営業担当者では、成果に大きな差が生まれる。

顧客はインターネットを活用して購入の判断材料となる情報にアクセスしやすくなっただけでなく、選択する目も肥えてきている。成熟した市場では商品による差別化が難しく、購買動機は商品力や価格だけにはなりえない。営業担当者の顧客との関係性や、顧客に提供する価値が継続的に取引を行う要因となるはずである。

「顧客が営業担当者を選ぶ時代になった」と以前から言われているが、大勢の顧客がひとりの優秀な営業担当者に群がる一極集中化現象は、今後も続いていくだろう。