昨年、弊社で調査を行った直後に「金融ショック」が起こり、その影響で需要はさらに縮小している。経費削減が叫ばれるいま、投資金額の大小にかかわらず計画が延期、または中止に追い込まれるケースが増え、ほとんどすべての業界で営業担当者は苦戦を強いられている。
需要が激減している以上、いままでの方法で成果を挙げ続けるのは難しい。訪問回数を増やしてとにかく通えば、自社の存在価値を高められると思い込んでいる企業は少なくない。しかし、顧客が計画の見直しをしている時期に強引に売り込んでも、営業担当者を疲弊させるだけで逆効果といえよう。顧客の状況を顧みず、自社の売り上げのためだけに強引な訪問を繰り返せば、かえって顧客の信頼を失うことにもなりかねない。
多くの営業担当者は、「この案件は今月契約できるのか」「今月は目標を達成できるのか、できないのか」と、その月のノルマをクリアすることに神経を集中させているが、顧客不在の一方的なアプローチは無意味だと言わざるをえない。
営業活動には、長期的に成果を挙げ続けるための“種まきの時期”と、商談に参加した案件を契約に結びつける“刈り取りの時期”がある。実は不況のいまは絶好の種まき期であり、顧客とのリレーションを強化するチャンスのときなのである。
景気がよいときは、多忙なためすでに取引のある大企業の営業担当者としか会わなかった顧客が、いまは会うメリットさえ感じれば、新規あるいは中小企業の営業担当者であっても面談の時間をつくるようになってきている。
このチャンスにじっくりと関係を構築し、企業として提供できる付加価値を明確にすることによって、景気が上向き購入可能な状況となったときには、真っ先に声をかけてもらえるようになる。「景気が悪い」「需要がない」という理由で何もしないのではなく、景気回復を見据えてアプローチをすべきなのだ。
顧客が求めているのは出入り業者ではなく、パートナーとして相談に乗ってくれる営業担当者だ。売れない営業担当者は、「何か仕事はありませんか」といった単なる御用聞きを機械的に繰り返しているにすぎない。購入予定がない場合は、当然門前払いになってしまう。
一方、売れる営業担当者は、顧客にとってメリットのある情報を必ず携えていく。たとえば、新規に購入する予定がない顧客でも、稼働率が低いからこそ実施可能な修理やメンテナンスなどを提案することができる。メンテナンスで大きなトラブルを未然に防ぐことができると伝えれば、顧客は関心を持つはずだ。