「何を聞くか」だけでなく「どのように聞き出すか」

プロセスごとのスキル格差
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プロセスごとのスキル格差

図をご覧いただきたい。これは50社の営業担当者300人を対象に、営業活動を10のプロセスに区切り、それぞれのスキルを5段階評価で自己採点してもらった結果である。

引き合い前に必要な5つのスキル、「事前調査」「カットイン」「ヒアリング」「提案&プレゼン」「継続アプローチ」のうち、及第点を超えたのは「提案&プレゼン」のみだった。商談が具体的になってきた引き合い後では、5項目すべてにおいて及第点をクリアしている。

引き合いの前後に分けて平均点を算出すると、引き合い前の平均2.5点に対し、引き合い後は4.1点と高得点。このデータから、引き合い前のスキルを伸ばすことが営業担当者個人の課題であり、営業成績14倍という格差の原因となっていると考えられる。

営業担当者はすぐに数字につながる目先の案件の刈り取りに気を取られがちだが、種をまき育てる引き合い前の活動こそが、継続的に売り上げを上げるために重要なのである。

最も点数が低い「カットイン」とは、顧客の心理的な障壁を取り除き、営業担当者がパートナーとして認知されるためのアプローチのことである。ヒアリング前のこの段階で、営業担当者は多くの課題を抱えていることがわかる。顧客に快くヒアリングに応じて答えてもらうためには、心理的な障壁を取り払い、回答することのメリットを感じさせなくてはならない。初回訪問の際、できるだけ短い言葉で自社が提供できるメリットと自社の強みを伝える力が求められる。

「継続アプローチ」は自社の強みを顧客に印象づける作業ともいえる。「プロフェッショナル」「いままでにないアイデアを提供してくれる」といったイメージづくりに成功すれば、何かあったとき「彼に相談してみるか」と思い出してもらえる。顧客ごとに情報を整理し、買い替えなどのチャンスを逃さないようにする。

種まきを行うにあたっては、何よりターゲットの選定が重要である。営業担当者が自分勝手に行きたいところに営業に行くという個人任せのターゲティングが営業活動のムダにつながる。行きたい顧客ではなく、行くべき顧客へ適切なアプローチが行われているかを上司が判断し、組織で共有すべきである。