「聞かれたら答える」はコーチングと言えない
営業マネジャーに求められるマネジメント力の中で、「現状把握力」と「コーチング力」の2つがとりわけ重要である。営業マネジャーは、部下がどのような顧客にアプローチしているのか、さらにはそれぞれの顧客との接触状況までを把握したうえで、部下に相談される前に悩みや問題点に気づき、具体的にアドバイスする役割を担う。
それらを支援する画期的なシステムとして多数の企業が導入したのがSFA(セールス・フォース・オートメーション)やCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムである。営業日報をデータ化し、営業担当者の活動を可視化・共有化することで、より効率的にマネジメントが行えると期待された。その活用実態を示したものが下のグラフである。
調査対象企業の9割以上が何らかの営業支援システムを導入し、営業担当者の個別の活動状況がデータで入力されている。しかし、導入していると答えた企業のうち、データを有効活用し、成果に結びつけていると答えたのはわずか61社(21.9%)にすぎなかった。
さらに営業日報のフィードバック状況については、「部下の営業日報に毎日返信をしている」マネジャーは300人中たった24人(8.0%)。SFAシステムに入力することで、営業担当者は上司に報告がすんでいると考えている。しかし、マネジャーはこれを活用しないどころか、読んでいない可能性もある。仮に読んでいたとしても、返答していなければ実践において役に立たない。
多くのマネジャーは、「フィードバックはうまくいっていないが、現状把握はできている」と主張する。では何を把握しているのかと尋ねると、「今月決まる案件の顧客名と金額については把握している」と答えるが、それ以外では取扱金額が大きい優良顧客を除くと答えられない。視点が1カ月単位なのだ。部下が関係強化のために継続訪問している顧客名や、訪問の頻度、アプローチの仕方に関してはほとんどのマネジャーが把握していない。売り上げの管理ではなく、実践の支援のためにシステムを活用し状況を把握すべきである。