現場で起きた問題は、誰の責任か

5ゲン主義を実践するにあたり、まずは「現場」の捉え方を180度変えました。従来の会社組織は、社長が頂点にいて、役員、管理職、そして底辺に現場が位置するピラミッド構造でした。言い換えれば、現場がその上の管理職や役員、社長を支えている構図です。しかし、この組織のあり方では、5ゲン主義の実践が難しいことに気づいたのです。

5ゲン主義が目指すのは、現場がしっかりと付加価値を生み出せるよう、管理職や経営者として何ができるかを追求することです。従来のピラミッド構造では、管理者はその上の役員や社長のほうを向くばかりで、現場を見てはいません。本来、会社組織は逆ピラミッドであるべきです。つまり、現場を頂点にして、その下で管理職、役員、社長が支える構図です。私は組織のあり方をこの逆ピラミッドに転換することにしました。そして、現場がやるべきことを正しくできるよう、管理監督することが管理者の仕事だと明確にしたのです。

たとえば、現場で不良品が発生したとします。なぜ不良品が発生したのか。これまでは現場で不良品を出した担当者の責任だとされてきました。しかし、5ゲン主義を導入してからは、現場が不良品を出さないように管理者はきちんと管理監督を行っていたのかと、管理者の責任を問うようになりました。

現場にマニュアルはあったのか。もし、マニュアルが存在せずに不良品が発生したのなら、作成を怠った管理者の責任です。では、マニュアルがあったにもかかわらず、不良品が発生した場合はどうでしょうか。現場がマニュアルを使いこなせるよう、きちんと教育していたのか。教育していなかったなら、それも管理職の責任です。それではマニュアルが存在し、教育したにもかかわらず不良品が出た場合はどうでしょう。きっとマニュアルの出来が悪かったのでしょう。これも管理者の責任です。

現場で起きる問題の99%は、管理者の問題です。このように管理者の責任を明確にした結果、管理者の仕事のやり方に変化が見られるようになりました。それまでは工場長の仕事と言えば、机に座って新聞を読んだり、たまに現場に顔を出して「がんばれよ」と声をかけるくらいでしたが、現場に問題が起きていないか見回ったり、課長や係長、担当者のコミュニケーションがスムーズか、現場のモチベーションはどうかを気にかけるようになったのです。