評判のいい業者が「悪い業者化」
そして3つめは実績がなく、利用者が少ない事業者。
これに対して首を傾げる人もいるかもしれません。要介護者が増え続けている今、どの事業者も利用者で満杯、大忙しという思い込みがあります。ところが実際はそうでもないそうです。介護業界に新規参入したばかりで実績のない事業者は信用がなくケアマネージャーとしても選定しづらい。
そのため利用者がなかなか増えないということです。とくに都市部では競合する事業者が多く、競争が激しい。ケアマネージャーのところには「ウチを使ってください」と営業マンが日参する状況だそうです。
これをCとします。このCでAを志向しているのなら、評判も高まりケアマネージャーからの信用も勝ち取れるのでしょうが、多くは“もうけを出している”Bを目指しているようです。
こうした構造で介護報酬の引き下げが行われればどうなるか。
「まずCの多くは淘汰されるでしょうね。現状でも利用者が少なく、ギリギリの経営をしていますから、介護報酬が引き下げられたら立ち行かなくなります」
次にB。
「介護報酬が下がるのは痛手ではありますが、そこはビジネス感覚に長けた事業者。食事の質を落とすなどコスト削減を行って利益を確保するはずです」
一番の気がかりはAだとFさんはいいます。
「Aタイプの事業者はよりよいサービス、心のこもった介護を行うために多くの職員を雇用するなど、多くの経費を使っています。赤字までは行かないまでも、経営はギリギリだと思います。これで介護報酬が下げられたら、その方向性は維持できなくなる。存続させるにはBのやり方をせざるを得なくなるわけです」
つまりサービスの質が低下するということです。
ただ、Fさんは「これも仕方がないこと」と受け止めているそうです。高齢化社会の流れは止めることができず、要介護者は増える一方。財源が限られている以上、多くは望めないという現状を肌で感じているからです。
理想を語ることができないのが、日本の介護状況なのかもしれません。