引き下げで、勢いづくのは「評判がよくない業者」

ともあれ新聞などの報道だけでは、介護報酬引き下げによって介護サービスにどんな影響が出るのか、今ひとつわかりません。そこで介護体験をきっかけに知り合ったケアマネージャーのFさんに、その影響を聞いてみました。

Fさんが影響を説明するケースとしてあげたのがデイサービスの事業者です。ケアマネージャーは作成したケアプランに沿って事業者を選定しますが、Fさんが多くのデイサービス事業者を見てきた経験上、大きく3つのタイプに分けられるということです。

「ひとつは実績があり、利用者の評判も良い施設。介護職員数が多く、利用者ひとりひとりに心のこもったサービスを提供する良心的な事業者です」

これをAとしましょう。

2つめは実績もあり利用者も多いのだけれど、あまり評判が良くない事業者。

「このタイプは職員の数が少ないんです。介護事業は需要の伸びが期待できますから、他業種から参入する業者が少なくありません。介護をビジネスととらえる発想があるから、効率を追求する。それで職員もサービスが提供できる必要最小限に抑えるわけです」

Fさんは、このタイプのデイサービスで次のような光景を見たことがあるそうです。

「たとえば食事のサービス。利用者のなかには介助がなければ食事が摂れない人がいるんですが、そういう人を円卓に集めて座らせる。介助を担当する職員はひとり。利用者のひとりにひと口、ふた口食べさせると隣の人に移る。という具合に円卓をまわっていくわけです。また、入浴では、ベッドを何台も並べ、そこへ全裸にした利用者を寝かせる。上にバスタオルをかけるぐらいで。そうして次から次へと入浴させていくんです」

ケアマネージャーの業界ではこうしたやり方を“大規模ケア”あるいは“こなしケア”というそうです。大人数に対して必要なケアを流れ作業のようにこなしていくから、“大規模”であり“こなし”ということです。扱いは人間というより物。要介護者が増え続ける現状では仕方のないことかもしれませんが、心のこもったサービスとはいえません。これをBとしましょう。

「こうしたやり方をするのは職員が少ないからです。巷間言われているように介護職員の給料は安い。それを必要最小限に抑えれば利益が多くなるわけです」

“一部の事業者はもうけ過ぎている”というのはBのような事業者が当たります。実際、このような事業者のトップは高級車で送り迎えされている人が少なくないそうです。