トレーニングは、以下の3つのステップで組み立てていく。

1. 周囲の人々の行動や関係性に着目して、自力で問題を作成する。
2. 観察によって手に入る手がかりをすべて集める。そして、手がかりの間に矛盾がないかをチェックする。「なにか変だな」と感じたら、その疑問が湧いてくる原因を徹底的に究明する。
3. 正解を確認する(正解が確認できない問題は意味がない)。

私がよくやるのは、ファミリーレストランの駐車場に停めてあるバイクはどの客のものかを推理する訓練だ。

店内を見回すと、若者のグループが2組いる。一方はみんなでビールを飲んでいるから、おそらくこのグループではないだろう。もう一方のグループは男性がふたり、女性がひとりの3人組だ。テーブルの上に黒いヘルメットが置いてあるから、ライダーはこの3人のうちの誰かに違いない。男性のひとりはブーツを履いているから、この男性である可能性が高いのではないだろうか。しかし、座席に置いてあるウインドブレーカーはピンク色だ。果たして男性がこんな色のウインドブレーカーを着るだろうか……。

この設問の優れているところは、こうした観察を重ねているうちに、誰かが必ずバイクにまたがって答えを教えてくれることである。答えを知り、自分の思い込みや先入観の強さ、観察力の乏しさを痛感することでSIQは高まっていく。

「あの中年のカップルは、果たして夫婦か愛人同士か」といった設問も興味深い。ミラーリング(模倣行動)といって、恋人同士は相手のしぐさを真似る習性があるから、片方が髪に手をやり、一瞬の間を置いて、もう一方も髪に手をやったら、おそらくふたりは愛人同士であろう。

しかしこの設問には、答え合わせがやりにくいという難点がある。

表情分析アナリスト 工藤 力(くどう・つとむ)
法務省法務総合研究所研修講師、学習院生涯学習センター講師。元大阪教育大学教授・明星大学教授。「Lie to me 嘘は真実を語る」(FOX チャンネル)にて、主人公カル・ライトマン博士のモデルとなった表情研究の第一人者、ポール・エクマン博士の研究チームに在籍経験を持つ。著書に『表情分析入門』など。
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