カフェこそ活性化の拠点
楠本氏は、カフェの存在を「縁側」にたとえる。その意味は「区切りのない曖昧な空間で、外の風景を取り込みながら、多様性のコミュニケーションを演出しているから」。
カフェ・カンパニーが業界に果たした役割を、専門誌『月刊カフェ&レストラン』の前田和彦編集長は、こう解説する。「カフェが単なる飲食店にとどまらず、街を活性化できる可能性を秘めた存在となることを、『渋谷』を舞台にわかりやすく提示した功績は大きいでしょう」。
どんなにデジタル化が進んでも、日本人はカフェや喫茶店で過ごすのが好きだ。カフェの数は約70500店と最盛期(81年)の半数以下に減ったが、これは常設喫茶店の数なので、各地で開かれる「期間限定店」はこの数には含まれない。若手を中心に積極的な開業が続き、新陳代謝も激しい。
多様な人がそれぞれの価値観を持ち、その日の状況に応じて店を選ぶ現在の日本において、消費者がカフェや喫茶店を選ぶ理由は、おそらく「いまの自分にピンとくるか」。
味とともに、消費者心理への訴求も欠かせない。
(永井 浩=撮影)