ドトールコーヒー、スターバックスコーヒーなどセルフ式カフェが席巻していた日本の喫茶業界に変化が起きた。「昭和型」の店が復権しているのだ。街の喫茶店事情を『日本カフェ興亡記』の著者高井尚之氏が報告する。

喫茶店の流行15年周期説

都内を歩くと、現代的なカフェに並んで「コメダ珈琲店」「星乃珈琲店」「上島珈琲店」といった重厚な店が目立つようになった。高品質の豆を用いて一杯ずつ手で淹れ、味のバランスにこだわる「スペシャルティコーヒー」を出す店も増えた。この傾向をフードビジネスコンサルタントの永嶋万州彦氏(元ドトールコーヒー常務)は次のように説明する。

「戦後の日本の喫茶業界は10~15年周期で人気業態の潮流が変わってきました。今回も同じ。スターバックスに代表されるシアトル系カフェが主流となって約15年たち、昔ながらの喫茶店が復活しています」

一連の現象を筆者は“セルフカフェ疲れ”と呼ぶ。その理由は2つあり、消費者心理や活動場所とも関連する。一つは、コーヒー代は安いが、硬いイスや座席間の狭い店では落ち着けず、少し割高でも「店で過ごす居心地」を重視する人が増えたこと。

もう一つは、人口の多い団塊世代(1947~49年生まれ)が定年退職期に達し、活動拠点を都心から自宅に近い郊外に移したことだ。

国内で最も店舗の多い「ドトールコーヒーショップ」のようなセルフカフェは、細切れ時間を活用するには便利だ。でも、休日に利用するときや定年後の生活では落ち着いて使いたい。また、近年はモバイル機器を駆使して社外で仕事をする“ノマド族”も増えた。

冒頭に掲げた店を運営するのは業界の大手企業だ。上島珈琲店はUCCグループ、星乃珈琲店はドトールグループが手がける。この中で上島だけはセルフカフェだ。

永嶋氏はこう予測する。「今後はさらにフルサービス型の喫茶店が増えるでしょう。通販や専門店でコーヒー豆を買って飲む人が増え、コンビニの100円コーヒーが定着した現在、手狭で客単価が低いセルフ業態での経営は厳しくなる。上島珈琲店もフルサービスに業態を変えて客単価を上げるかもしれません」。

その兆しが現れているのだ。