「第3の波」名店は地方にあり

ここ数年、話題のキーワードに米国発のコンセプト「サードウェーブコーヒー」がある。スターバックスなどシアトル系に続く第3の波という意味で、コーヒーの淹れ方や豆の買い付け法にこだわり、本格的なコーヒーを提供する店である。

米国のサードウェーブを象徴する店の一つが「ブルーボトル」。この10月に予定されていた日本1号店(東京・清澄白河)の開業は来年に延びたが、オープンすればかなりの話題を振りまくはずだ。

実は日本でもサードウェーブに相当する動きは起きている。ただ、米国と日本では意味合いが少し違う。日本におけるサードウェーブの特徴は、(1)生産国での豆栽培重視、(2)流通過程の透明化、(3)自家焙煎、(4)淹れ方にこだわり一杯ずつ手作業で抽出する――ということだ。

このうち(3)と(4)は昭和時代の喫茶店の文化だが、当時に比べて交通機関や物流機能が進化した現在、(1)~(4)をすべて実践する店もある。

その代表が茨城県に本社があるサザコーヒーと、長野県が本社の丸山珈琲だ。ともにコーヒー豆の販売が好調で、コーヒー職人「バリスタ」育成にも力を注ぐ。

サザコーヒー会長 鈴木誉志男氏●家業の映画館内にコーヒー店を開き創業。コロンビアに直営農園を所有。他の産地から買い付けた豆もすべて本店横の自社工場で焙煎。サザ・スペシャル・ブレンド480円(税込み)。徳川将軍珈琲(200g 1500円=同)などの豆販売でも存在感。

人口約15万人の茨城県ひたちなか市。JR勝田駅から徒歩10分ほどのサザコーヒー本店には、平日の昼間でもお客が絶えない。鈴木誉志男会長が東洋大学卒業後、映画の興行プロデューサーを務めた後に帰郷して、父が経営していた映画館「勝田宝塚劇場」内に開いた店が前身だ。

そんな経歴もあり、随所に喫茶+文化を組み込む。入り口横にはギャラリーがあり、店内にはコーヒー生産地の仮面や手芸も飾られる。

「コーヒー豆もお客様に説明できるストーリー性のある豆を調達します」と語る鈴木氏が、コーヒー生産国を巡って厳選した豆は、たとえば「グアテマラのアンティグア」「エルサルバドルのゴルダ」といった高品質なもので、スターバックスが使う豆よりもさらにランクが高い。

また、中小チェーンとしては珍しく、コロンビアに直営の「サザコーヒー農園」も所有する。「土壌や品種にこだわり、生産も効率性を求めずに減農薬で栽培するため病虫害に弱く、これまで16年間で3回全滅しました」(鈴木氏)。

こうして収穫・購入した豆を自社工場で焙煎。店では布ドリップで淹れて提供する。「サザ・スペシャル・ブレンド」は480円(税込み)、多くのコーヒーメニューは500円前後に抑えている。

※記事中の価格は特に記載のないかぎり税抜き

(山口典利(コメダ珈琲店)、永井 浩=撮影)
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