記憶力の量で力関係が決まる

元受講者は、動揺する。最初は「まさか、そんな内容の教材ではなかったはずだ」と強気でいられても、次第に「でも、待てよ。もしかしたら、そういう記述が教材の申込書にあったのかもしれない」と、記憶が「薄い」ゆえに、弱気になってくるのだ。途中で勉強を放棄した後ろめたさもあり、先方の話をついつい聞いてしまうところもある。

そんな状況で、いきなり試験を受けろと言われても……。業者は、相手が困惑する状況になることもわかっている。そこで、こう“助け舟”を出す。

「本来、お持ちの教材で勉強をし、テストを受けて60点以上で合格となりますが、お仕事が忙しく勉強する時間はありませんよね。そこで今回は特例として、検定用紙と共に模範解答がついた解説書などの教材をお渡します。あなた様は、その解説を見ながら、用紙に答えを書いて頂き、答案を提出してもらえれば、講座の終了とさせて頂きます」

ここで「お渡しします」と言うけれど、有料の教材を売るのが、業者の目的であるゆえ、上記の文言に、相手が「はい」と答えようものなら、言葉巧みに数十万円もする教材販売へと誘導していく。

ここで注意しておきたいのは、一度金を払い教材を買ったからといって、勧誘電話はやむことはないということだ。その人が他の講座を受けている記録があれば、新たに「法務関係の勉強が終わっていませんが」と電話をかけて、新たな教材を売りつける。教材の勉強を途中で投げ出した数が多ければ、多い人ほど、ターゲットにされてしまうことになる。

こうした手口を資格二次商法などという。

今見てきた、「契約が終了していない」と迫る手口以外にも、様々な難癖のつけかたがある。

「契約を途中で終了する場合には、手数料、解約料が必要です」
「講座の教材に未払いがありますね。もしお金を払っていただけないなら、お宅に伺いすることになりますが」

そうやって数十回以上も電話をかけられて、4000万円以上をだまし取られたケースも起きている。