記憶を再現できるメモの量に「売上」は比例
ビジネスにおいては、相手の状況をここまで詳細に書く必要はないかもしれないが、最低限、後から読んで、その時の記憶を紡ぎ出せるような内容は書いておきたい。特に、報告書は結論を先に書き、その下に結論を補足する形で文章を置いていくピラミッド型がよいだろう。他人が読む上で、最初に結論がわかれば、読みやすい面もあるが、後から、自分が読んだ時においても、結論が先にわかれば、記憶を引っ張り出しやすくなる。
正式な報告書以前にも、何か気になることを聞いたら、即メモの習慣を定着させたい。記憶は優先順位の低いものから消えていくので、メモは欠かせない。私も悪質業者などに潜入取材した内容は、その場を離れたらすぐに、その時の状況が頭の中に残っているうちに、道すがらメモするように心がけている。そして、家に戻り、その記述をもとに、パソコンなどで書面にやりとりを再現する。
記憶は雲のような存在で、別なことを強く考えると、前の記憶は押し出されて消えてしまう。それゆえ、メモする時には、後から記憶を引っ張り出せるように、キーワードとなる言葉や文章を、他の出来事に影響されないうちに早めに書いておくのだ。
今や、パソコン、スマホの普及で、文字は「打つ」ものになった感があるが、やはり「文字を書く」行為が記憶の長持ちという観点でいえば、だんぜん正しいと思う。何か感じたことや思うところがあれば、すぐにメモを取る。頭のデータファイルに収める。その蓄積は、人より抜きんでようとする際には、必須なことになるはずだ。
実際に、詐欺師らも日々、手に入れたたくさんの名簿を手に入れて、数多くの電話をかける。当然、かけた相手のことを後々まですべて覚えていない。それゆえに、電話をかけた後、リスト名のところに、「話し好き・押せば契約できる・カモ」など、相手の状況がどうだったのか、短いコメントを入れておく。
それは次に電話をかける際に、過去の記憶を引っ張り出すためのキーワードとなる。豊富な情報力を持つことで、電話をかけた記憶があやふやな相手に対して、有利な立場で話をすることができ、時に強気な文言で、だましの話を展開できるというわけだ。
いかにリストに付加価値をつけ、過去の記憶を紡ぎだせる言葉をストックしておけるか。ワルが荒稼ぎするのも、我々が売上を伸ばすのも、「少し前の記憶」をリアルに呼び起こせるかにかかっているのだ。