ランダムな500桁の数字を、耳で聞いたその場で覚えきる! 驚異の記憶力を持つイスラエル男に学ぶシンプルな「記憶の原則」とは。
ギネスブックの「記憶力世界一」記録保持者、エラン・カッツ氏

私が記憶力に興味を持つきっかけとなったのは、手品が得意な友人がいたこと。手品のできない自分は記憶力で人を驚かそうと思ったんです。イスラエル北部の地中海沿岸にある町の高校に通いましたが、学校の成績は中くらい。よかったのは哲学くらいでした。

そこで、私は記憶力を有効に使って勉強時間を短縮し、サーフィンと勉強を両立させたいと考えました。それがうまくいって、トップとはいかぬまでもかなりいい成績を挙げるようになりました。

私は記憶力世界一として、1998年発行のギネスブック(イスラエル版)に掲載されました。弁護士の立ち会いのもと、ランダムな500桁の数字を1回だけ読み上げてもらって全部覚えるのですが、まず最初から最後まで、次にその逆の最後から最初までを間違えずに言わねばなりません。覚えるのに1時間から1時間半かかりましたが、無事に成功しました。その後、韓国を訪問した際に同様の試みを行ったときは、新しい500桁を15~20分程度で覚えることができました。

次に認められた世界記録は100の色の記憶でした。大きなボードに赤、青、紫など色の付いた四角いステッカーを貼って、それを順に覚えていく。1時間かかったという従来の記録を25分に短縮できました。

難しいチャレンジでしたが、私はおのおのの色を頭文字に替えました。たとえば黄色ならY、赤ならR、紫ならP、緑ならG、そして黄色と赤=YRならyear、紫と緑=PGはpigで、併せて豚の年……という具合に、瞬時に頭の中で言葉に置き換えて覚えることに成功しました。

私は別に天才ではありません。誰でもできる記憶の方法を提示しているだけです。他の人と比べてアドバンテージと呼べるのは、もう15年間も訓練を積んでいることくらい。もっとも、私がユダヤ人であることもその一つといえるかもしれません。

歴史上、どの社会でもユダヤ人は常に他人に頼れぬアウトサイダーであり、常に他人より努力して、自分たちの存在価値を証明する必要がありました。そして物事をよりよい方向へ進めようとする欲求が強く、常に何かの改革・イノベーションを積み重ねてきました。イスラエル経済の発展はその結果でしょう。こうした性向は、遺伝子のように私の中に組み込まれていると思っています。

記憶力と関連付けられる、ユダヤ独特の学習法や習慣がいくつもあります。22あるヘブライ文字を数字に置き換える「ゲマトリア」は有名です。約1000年前にハザール王国の王があるラビ(宗教的指導者)に教わったという「体を揺さぶりなら勉強すると集中力が高まる」ことの効果は、今は科学の面からも証明されています。同様に、歩きながら学んだほうが、じっと座っているより半分の時間で2倍の効果がある、という手法を皆様のお子さんに教えてあげてはいかがでしょう。