さて、記憶力向上のための基本的な考え方を、以下に述べていきます。
マクドナルドのロゴを思い出してください。といってもシンプルですし、誰もが絵に描けるでしょう。しかし、ピザハットは? スターバックスは? と聞かれたら困惑するでしょう。デザインが複雑とはいえ、何度も目にしているものを、なぜちゃんと覚えられないのでしょうか?
それは、視界に入っていても注意を払っていないから。物事を漫然と見たり聞いたりするだけでは、頭には入ってきません。パソコンと同じで、最後に“saveボタン”を押さないと記憶に留まらないのです。対象に注意を払うということが、この“saveボタン”を押す行為に当たります。家を出て5分後に「鍵を閉めたかな?」「アイロンのコンセントを抜いたかな?」と心配するのも同じ理由です。
我々の脳は、同時に1つのことしかできません。いわゆる“マルチタスク”ができる人は存在しません。女性にはそれができるともいわれますが、実はそうではなくて、次の作業に頭を切り替えて集中するのが、男性より早いということです。
ですから、1つのことに集中することは大変重要です。別の部屋にペンを取りにいく際、途中に敷いてあるカーペットのシミは無視しなければならないのと同じ。つい気を取られてしまうような事柄を「脇に置いておく」作業が重要です。
今は情報過多の時代。15世紀の人が一生のうちに覚えた情報が、米ニューヨークタイムズ紙の記事1日分といわれるくらいですから、自分が行うことには優先順位を付ける必要があります。たとえば、自動車事故の多くは運転中の携帯電話の操作が原因。情報を見てその意味を認識するまでには約2秒もかかるからです。だから、運転中は携帯を脇に置いて使わない、触れないと決めておく。自分ではほんのちょっとだと思っても、気が散ることで主たる作業に与える影響は、時に致命的といえるほど大きいのです。
メールの整理も気が散りますね。1日に100も200も来るメール全部に返事を出すのは、昔でいえば5分ごとに郵便受けを見にいくようなもの。メールのチェックは、1日に2~3回程度に抑えたほうがいい。