記憶を長持ちさせるには

資格二次商法では、受講の契約条件や支払内容を覚えておらず、「そうだったかもしれない」という曖昧な記憶をついて、行われる。もちろん、ありもしない状況をでっちあげて、お金を取るのはしてはいけない行為だが、ビジネスにおいて、どのようにこの手法が使えるのだろうか?

営業の仕事なら、人と出会う延べ人数は相当な数になるはずだ。だが、重要人物以外、会った相手とかわした言葉を細かく覚えている人はまずいないだろう。出会った相手もまた、そうである。

だからこそ、もし2度目にあった時に、相手が覚えていないことを、自分が覚えていれば、話の上で優位に立つことができる。もし、相手が前に会った時の話を忘れていれば、「○○とおっしゃっていましたよね」と言ってあげれば、物事をしっかり覚えている人という印象を与えられるはずだ。

記憶は時間経過とともに、忘れてしまうものなので、相手より鮮明な記憶をもっている人の方が、話の主導権も握り、有利な立場で話を展開できる。前出の通信教材でだまされた人には、電話をかけてきた悪徳業者は「記憶力の確かな人」に映ったのだろう。だから、電話口で圧倒され、弱い立場に追いやられてしまったのだ。

では、記憶を長持ちさせるにはどうしたらいいのか。

まず、基本的なことだが、記憶を「紙に書く」行為は欠かせない。面倒臭がって、日々の報告書や業務日報を形式的にしか書かない人も多いかもしれないが、できるだけ具体的に文字にしておくことで、後に大きな利益につながることもあるだろう。

再びワルの話になるが、あるカルト団体では、一人の人物を勧誘して信者にさせるまでに、相手が「どの場面」で「どんな会話」をして「どう答えた」のか、など詳細な記録を取っておく。そして、それを組織の上に報告して、今後、どのような方法でマインドコントロールをかけていくのかを考えていくのだ。それゆえ、その人物が数カ月、数年かけて、信者になるまでの記録はすべてストックされており、「一人前の信者」になるまでに分厚い資料が出来上がることになる。