アドリブ的なシナリオ力で金を騙し取る

今年6月までの特殊詐欺の被害総額は268億2900万円を超えて、過去最悪になった(警察庁発表)。近頃の詐欺師は状況に応じた手口で私たちをだます「アドリブ的なシナリオ力」を持っている。つまり、臨機応変に対応を変えてくるのだ。

振り込め詐欺を含む特殊詐欺への警戒が、様々なメディア、機関を通じて叫ばれている。それは彼らにとって“逆風”のはずだが、むしろそれに乗じて罠を仕掛けてくるのである。

例えば、60代女性。警察官を騙(かた)る男からこんな電話がかかってきた。

「あなたのカードが偽造されています」

人はこうした権威ある立場からの言葉には弱いとはいえ、すぐに電話の主を本物の警察官と女性が信じ込んでしまったのは後述のような理由がある。

詐欺師は「本人確認のため」と称して、まず女性の銀行の口座番号や残高などを聞き出し、次のように畳みかける。

「カードが偽造されているので、預金が引き出される可能性があります。お金を家に置いておいた方が安全です」

そして女性を銀行へ向わせ、250万円ほどを引き出させる。その後、女性が家に戻った頃を見計らって、次のようにシナリオ通りのセリフを囁き、金を騙し取るのだ。

「あなたの銀行でお金を引き出した人の中に偽札がまざっていた人がいた。それを調べるために刑事がそちらに向かうので、お金を渡してほしい」

そもそも、なぜ「カードが偽造された」という言葉を女性が簡単に信じたのか。

実は数日前に、次のようなニュースが話題になった。

ATMシステムの保守・管理業務に携わった委託先の社員が、預金者の情報を不正に取得しキャッシュカードを偽造。口座から2000万円以上を引き出していたとして、神奈川県警により、逮捕されている。

こうしたニュースが流された後に、警察官を騙った男が「その銀行にまだ犯人の共犯者がいる」と電話をかけて犯行に及んだのである。