「So What」を繰り返し論理的思考する
詐欺犯はこの手法を、金を騙し取るという行為に使っており、到底許すことができないが、この仮説を立てた上で仕事を進めることは、ビジネスにおいては有効である。
仮説思考をする際、大事になってくるのは、現状で把握している情報やデータから導き出した解決策に対して「だから、何なのか」という突っ込んだ質問を自らにして、より精度の高い仮説にしていくことである。
これはよく「So What」などで考えろと言われる。「だから、何なのか」「なぜ、そうなのか」を繰り返して考えることで、仮説をどんどん掘り下げていく。それにより問題に対する根本原因がはっきりと見えてきて、より優れた改善策を生みだせるというわけだ。
仮説をより深く掘り下げて考える方法には様々ある。例えば、「イシュー・ツリー」(ロジック・ツリー)は、まず大きな問題を掲げ、「だから、何なのか」「なぜ、そうなのか」と問う。その結果を下にいくつか連ならせて、さらにそれぞれについて「So What」を繰り返し、階層に分けながらツリー状に構造化していく。
これを使えば、目に見える形で問題が整理できるので、自分の頭だけでなく、他人に説明する際にも理解してもらえやすくなる。実は、前出の詐欺師はまさにこの論理的思考で、仮説を立てていたのである。
あなたのカードが偽造されている、と騙そうと思っても相手はおいそれとは信じない。それはなぜか? 世の中で詐欺の手口として広く知られ、注意喚起されているからだ。では、信じさせるにはどうすればいいのか? 警察官を名乗ればいい。それでも信じなかったら? 直近に起きたカード偽造のニュースに便乗したトークをすればいいかもしれない――。
そんなロジックが詐欺師たちの組織のなかで組み立てられたに違いない。
一般のビジネスでも、こうした論理的思考は不可欠だ。
「なぜ、売れなくなったのか」と売り上げ減という問題の要因を考えたとき、「競合相手がいるために売上げが落ちた」という仮説が立てられとする。それはなぜかを考える。例えば、宣伝や販売方法で競合相手に比べて何が劣っていたのではないかというさらに仮説を立てる。そうすると対処法として他社製品との差別化をどう図るべきかのアイデアを具体的に練ることができる。
また、売り上げ減の要因が「商品の割高感だ」とすれば、「コストを抑えた価格を提示できないか」「セット販売で、割安感を感じさせられないか」と考えられる。あるいは逆転の発想で「値段を高くしても商品に付加価値をつけて、高級志向の人をターゲットにしたものにリニューアルできないか」などと考えてみる。
そうやって「なぜ」の繰り返しで、問題点を分解していく作業のプロセスに、まっとうなビジネスの世界とワルの世界にそう違いがあるわけではないのだ。大事なのはロジック思考と、それによる準備をしっかりとすることなのである。