「曖昧な記憶」につけこむ商法のカラクリ

記憶は時間の経過とともに薄れていくものである。この「薄れ」に巧みにつけいる詐欺をご存じだろうか。

例えば、通信講座だ。資格取得のための勉強を始めたものの、途中で挫折してしまう。教材などをほったらかしにして、押入れの奥深くに眠らせてしまう。

悪質業者はそうした人を狙ってだましの罠を仕掛けてくる。

「以前に、取り組んで頂いた講座の件でご連絡しました」

業者は過去に講座などの勉強をした人のリストを手に入れて、こんなふうに電話をかける。

電話を受けた人は勉強した記憶はあるので、「ええ」と答える。すると、業者は相手の対応ぶりから、「資格を取得したのか」それとも「勉強を途中で投げ出してしまったのか」を即座に判断し、挫折したと思しき人に「その講座が、いまだ修了しておりませんが」と、カマをかける。

相手が「そうだったかな」という反応を取ると、ここぞとばかり、業者は畳みかけてくる。

「お客様は、契約に基づいて、受講修了の検定を受けて頂く必要があります」
「途中での終了は契約違反になります」

この業者は教材販売会社なのだが、「講座の最終検定を行う機関だ」とウソをつき、「当社の試験を受けて合格して、講座修了の認定書を手にする必要があるんです」と、さも本当にありそうなストーリーを作り上げて、話を進めてくる。