「パールハーバー」を避けるために飛び級

【窪田】私が通っていたマドンナスクールでは5年生の歴史でパールハーバーの授業があったんですよ。上の学年の女の子がパールハーバーの授業をうけて辛い思いをした話を聞きました。この授業だけは絶対に受けたくないと思って、猛勉強して5年生をスキップしたんですよね。

英語も頑張りましたね。英語すらろくに話せなかった日本人が、学校始まって以来の飛び級をしたので学校中から驚かれたのなんの。これだけの成績をとったんだから飛び級させてくれって校長先生に頼みましたから、交渉力もあったのかもしれません。でも、まさか猛勉強したのがこの理由だったということは、両親は知らないと思います。話してませんから。

シアトルにある同業のバイオ企業のベテランCEOとの会話の中で、彼が子供の頃にクラスにいた日本から来た少年を、パールハーバーの歴史の授業中にかばったという話を聞いた時は、目頭が熱くなるというか胸がつまりましたよ。

【川端】パールハーバーの話は本当にそうね。私の生徒の中にも授業中に泣いたって言う子が何人かいました。昔、主人とハワイに行った時にアリゾナメモリアルに行ったんですよ。私たち以外に日本人がいなくて肩身が狭い思いをしました。

【窪田】現在は変わったようですが、アメリカではこういう教育がされていたって日本では知られてないですよね。みんなびっくりすると思います。ほんと飛び級するに値するモチベーションになったんですよ、あれは。

【川端】ちょっと話が飛びますけど、私の叔父は海軍兵学校を出たパイロットだったんです。宮野善治郎といいますが、ガダルカナル島の近くで昭和18年に戦死したと聞いています。叔父のことは本にもなってるんです。山本五十六大将の護衛機を出した零戦隊の隊長でした。アメリカには既にマークされていたので狙い撃ちされたらしいんです。「零戦燃ゆ(1984年)」という映画では俳優の目黒祐樹さんが叔父の役をやっていました。そういう背景があるので、ハワイでは愕然としましたね。

【窪田】そうだったんですか。そんな方がご親戚ならなおさらですよね。歴史は常に誰かの主観で語り継がれるから難しい。勝利が正義とも限らない。容易なことではありませんが、子どもの世代、孫の世代、その先の世代がこんな辛い思いをしなくていいような世界を作りたいですよね。