せっかく技術力は世界最高水準なのに、なぜそれを生かしきれないのか。21世紀に入り、急速にニッポン企業のアイデア力が低下しているように見えるのは、経営者のせいか、日本人の限界なのか。

なぜ世界のソニーは凋落したのか

天外伺朗 元ソニー上席常務

しかし、かつての日本企業には「卓越したアイデア力を持つ人材が豊富にいた」と語るのは元祖携帯音楽プレーヤー・ウォークマンをこの世に送ったソニーの元上席常務である作家の天外伺朗氏。自身もカリスマ技術者としてつとに有名で、CDや、犬型ロボットのAIBOの開発責任者として活躍したが、ほかにもノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈氏などがソニーに在籍していた(56年頃)。

その江崎氏は入社当時、ソニーのカルチャーを「組織された混沌」または「秩序ある混沌」と表現した。「技術者は自由奔放に仕事を進め、混沌とした面もありますが、会社全体としては目標が明確でよく秩序が保たれていた」といった趣旨のコメントも残している。

ソニーの設立趣意書の第一条にはこうある。〈真面目なる技術者の技能を最高度に発揮せしむべき自由豁達にして愉快なる理想工場の建設〉。江崎氏だけでなく、多くの才能ある人材はそうした社風のなかで、大いに成長していったのだ。