人間は本能で2、3秒後に起きることを予測している

Dr. Kelly A. Turner 
ケリー・ターナー博士

類似の実験を、コンピューターでおこなったものもあります。モニターを見て、被験者は2枚のカーテン画像のどちらの背後に絵が隠れているかを当てます。カードの実験と同じように、研究者は被験者の身体反応を調べました。

驚いたことに、被験者の手の汗腺は、コンピューターがどちらのカーテンに絵を隠すか決める2、3秒も前に、答えを正しく予測していたのです。もっとも手の汗腺の開きをみるかぎり被験者はほぼ正解を予測していたのに、自分の手のひらの反応に気づくことができず、誤答していました。人間には、2、3秒後の未来の予測能力があったのです。カードゲームをするギャンブラーにとっては、貴重な教訓でしょう。自分の手のひらの汗腺の動きがわかるほど身体の声に耳を澄ませば、次に来るカードを予知できるようになる、というのですから。

直感に従って決断した人の満足度は高い

直感は信頼に値すると示す実験を、さらに紹介しましょう。ある実験によると、どの家を買うか、誰と結婚するかといった人生における大きな決断では、頭で論理的に考えた末の選択よりも直感で決めた方がよい結果をもたらすことがわかりました。車の購入時、情報収集をして熟考の末に決めた人のうち、買ったあともその車に満足していた人は、わずか25パーセントでした。それに対して直感で即決した人は、60パーセントが満足していたのです。

似たような実験に、複雑な問題に対してじっくり考える時間を与えられた被験者群と、急に答えを出すよう求められた被験者群では、直感で即座に答えた後者のほうが概して正解率が高かった、とするものがありました。

この研究に取り組んでいるあいだ、わたし自身も、さまざまな直感を得たおかげで、ずいぶん作業がはかどりました。そのときは不思議な感じがしましたが、研究するうちに、わかってきました。直感とは、わたしたちが頭で答えを出す前に、どうするのがいちばんいいかを教えてくれるものなのです。直感を司る脳の部位は、人間が藪に潜む猛獣を避けながら暮らしていたような太古の時代に発達しました。差し迫った危険を感知したり、安全な場所を見きわめたりする能力を備える部位です。

幸いにして、現代のわたしたちの日常は、格段に安全になりました。脳のこの部分を稼働させる必要はほとんどなくなったので、いざというときにも、わたしたちには使い方がわかりません。脳からのメッセージにも気づきません。けれども、わたしたちは直感力を失ったわけではありません。実際、劇的な寛解を遂げた人々は、直感力をうまくつかって生命の危機を克服した人々なのです。

※この原稿は、『がんが自然に治る生き方』からの抜粋です。

Dr. Kelly A. Turner ケリー・ターナー博士
腫瘍内科学領域の研究者。学士号を取得したハーバード大学時代に統合医療に関心を持ち、カリフォルニア大学バークレー校にて博士号取得。博士論文研究では奇跡的な回復を遂げた1000件以上の症例報告論文を分析し、1年間かけて世界10カ国へ出かけ、奇跡的な生還を遂げたガン患者と代替治療者を対象に、治癒に至る過程についてのインタビューを行った。本書はそこから得られた知見を患者や家族、そして健やかに生きたいすべての人のためにわかりやすくまとめた著者初の書籍。
(長田美穂=訳)
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