「どうしますか」社員を心の伴走が変える

<strong>双日社長 加瀬 豊<br></strong>1947年、千葉県生まれ。70年、東京大学経済学部卒業後、日商岩井(現双日)に入社。ニュージーランド法人社長、木材製品部長、米国ポートランド店長など歴任。双日副社長を経て、2007年4月、代表取締役社長就任。1度会って話した社員の名前は、ほぼフルネームで覚えてしまう。コツは「何かのキーワードと結びつけて覚えること」。
双日社長 加瀬 豊
1947年、千葉県生まれ。70年、東京大学経済学部卒業後、日商岩井(現双日)に入社。ニュージーランド法人社長、木材製品部長、米国ポートランド店長など歴任。双日副社長を経て、2007年4月、代表取締役社長就任。1度会って話した社員の名前は、ほぼフルネームで覚えてしまう。コツは「何かのキーワードと結びつけて覚えること」。

上司は「問いかけ」をするのが仕事。問いかけをしなければ仕事をしていないとさえいえます。実際、部下に課題やノルマを与えるとき、私はいつも「3つの問いかけ」をするよう努めています。

まず、最初の問いは「なぜ、そうなったの?」です。たとえば部下が、「トラブルが発生しました」「売り上げ減少です」「計画が進展しません」などと相談にきた場合。「どうしますか?」と尋ねる部下に対し、私は「なぜ、そうなったの?」と問い返します。

第2の問いかけは「それで、君自身、どう思ってるの?」です。そして、最後に「では、どうしたいの?」。

ここで、部下から「こうしたい」という提案が出るのを待ちます。答えを聞く前に上から指示を出してしまえば、その部下の成長は止まってしまいますし、自発的に仕事に取り組む意欲も引き出せません。上からノルマ、課題をかぶせることになってしまいます。

第3の問い「どうしたいの?」まで進んだとき、部下によっては、こちらが考えていた以上の案を出してくる人もいれば、なかなか答えが返ってこないケースもあります。そのような場合でも、案件の重要度、緊急度にもよりますが、できるかぎり答えが出てくるのを待つようにしています。

部下に課題やノルマを与える場合は、このように自発型・提案型となるように仕向ける……これが私のやり方です。

その場合、上司としては当然、任せきりではなく「俺も一緒にやる」という姿勢と事後のフォローも必要です。問いかけをする側は、当然、経験知に裏打ちされた自分自身の答えをもっておかなければなりません。

また、「最終責任は自分が負う」「部下の案を試させてみて、うまくいかなかったら最後は自分が出ていって解決する」と腹を決めておかなければなりません。その限度内におさまるうちは、なるべく部下の自主性に任せるわけです。