「ポジティブ閻魔帳」D査定社員への期待のかけ方
子会社「リサージ」の社長を務めていた頃、半期に1度、教育担当者の女性約10名との間で考課後面接を行っていた。面接の場では、厳しいことも言わなければならない。
彼女らは全国に散らばって勤務しており、直接会って話をする機会は多くても月に2~3度だった。
人事考課を伝えるとき一番いけないのは、多忙を理由に短時間で済ませようとすることだ。たとえば、「いま少し時間が空いたから15分でやろう」と部下に声をかけ、準備をせずに始めたとする。時間がないからと焦ると、言葉も乱暴になりがちだ。その結果、話した内容がまったく相手の心に届いていなかったということになってしまう。
私の場合、面接の予定を半年前からスケジュールに組み込むことにしていた。普段顔を合わせることが少ない分、面接時間も1人あたりたっぷり2~3時間をかける。面接前には個々人の業績、目標の達成状況などを踏まえ、そのうえで話の中身や順序、強調する点を決めておく。「こう言ったら、相手はこう出てくるだろう」とシミュレートをして当日に臨むのである。
その経験から学んだ私なりの方法論をまとめてみた。
一番大事なのは、相手の良いところから先に話すということだ。たとえば「君はやっぱりこういうところが優れていると思う。だけど、実はこういうところは課題だと思っている」と言う。この順番を間違えると感情的に受け入れてもらえないケースが多い。
問題点を指摘するときには、「なぜ問題なのか」を含めて明確に伝えなければならない。嫌な話をするときは、誰しも腰が引けてしまうもの。意識していないと、どうしてもぼんやりとしたわかりにくい話し方をしてしまう。これは明らかに逆効果である。聞き手の心には「何が言いたいかわからないが、悪いことを言われた」というマイナスのイメージだけが残ってしまうのだ。
だから「君のこういうところは良くないと思うよ。なぜなら、こういうことがあって、あのとき問題が起こったよね。だから私はもう少しこんなふうに改善したほうがいいと思う」と、相手の目を見てはっきり言わなければならない。