300人の課長を対話で磨き上げる

新しい仕事には、どんな分野でも刺激や発見があり、挑戦もできる。石油・ガス開発部へいくと、すぐに、そんな機会がきた。米アラバマ州沖のメキシコ湾にある天然ガス田の権益の購入だ。部下に「いくらで買えるのか」と調べさせると、先方は1億3000万ドルから1億4000万ドルの値を付け、丸紅が雇ったコンサルタントも「1億2300万ドルから1億2700万ドルなら、買えるだろう」と言う。でも、トレーダーの感覚で「そんなの、値切るのが当たり前だ」と思い、「9300万ドルで応じてみろ」と指示した。すると、その価格で買えた。

銀行から融資を受ける算段をつけ、そういう案件を扱う投融資委員会に出たら、委員長の副社長に「資金がほとんどないときに、こんなことをやるのか」とあきれられた。投資利益率は社内基準ぎりぎりだったが、天然ガスの国際価格が急騰し、契約を結んだときには利益が確定できていた。珍しい例で「こんなのはツキだけだな」と思う。でも、そういうツキも、挑戦しなければ、訪れない。

いま、シェールガスの開発も続く。海底だけでなく、内陸部にもある。やはり、新しいことに、いろいろと工夫して、挑戦しなければいけない。そう、痛感する。

「依様畫葫蘆」(様に依りて葫蘆を畫く)――型通りに瓢箪を描くだけとの意味で、中国の歴史書からの抜粋を収めた『十八史略』にある言葉。何の工夫もなく、安易にことを終わらせることへの戒めで、「過去の」延長に安住しない國分流は、この教えと重なる。

社長になる前の5年間、経営企画部の担当役員や投融資委員長も経験した。ずっと感じたのは、部門によってものの考え方にばらつきがあり、仕事に対する手法も違う、という点だ。それぞれに、いいところも、悪いところもある。そのいいところを、少しでも底上げできれば、会社はずいぶん伸びるだろう。まだまだ「伸び代」がある、と思ってきた。