困難に挑んできた経営者たちが見出した「束ねるための秘伝」を紹介する。認識・関係・環境・人格の4つのアプローチに分けて、 それぞれの方法を検討してみよう。

逆風下に目的を達成するためには -朝田照男

朝田照男●1948年、東京都生まれ。72年慶應義塾大学法学部卒業後、丸紅入社。一貫して財務畑を歩み、常務執行役員、専務執行役員を経て、2008年に社長就任。13年から現職。

私はふだん、朝6時45分に出社し、早いときは7時半からミーティングを始めています。このような早朝始業を習慣化したのは、執行役員財務部長だった2003年からです。丸紅の財務状態は01~02年に危機を迎えたものの、当時はすでに回復軌道に乗っていました。ところが欧米の格付け機関は逆に当社の格付けを引き下げ、そのことが755億円の優先株発行の重石になっていました。

逆風下で増資を達成するためには、それだけの説得材料を持って格付け機関や金融機関をまわり、彼らの理解を得なければなりません。だから8時半までに社内のミーティングを済ませ、彼らの始業時間である9時に間に合うように会社を出るようになりました。

考えてみれば、こういった動きは商社の仕事の基本です。会社から電話、メールをするだけで商売ができるはずはありません。あくまでもお客様と話をして、商売をとってくるのです。始業時間の9時から社内でミーティングをしていたら、そのぶんの時間が無駄になります。

(10年11月15日号 当時・社長 構成=面澤淳市)

(アール・アンド・イー合同会社代表 奈良雅弘=総括、分析・解説)
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