困難に挑んできた経営者たちが見出した「束ねるための秘伝」を紹介する。認識・関係・環境・人格の4つのアプローチに分けて、 それぞれの方法を検討してみよう。
しつこい情熱で本気度を伝える -南場智子
(インターネットオークション&ショッピングサイトの)名前は「ビッダーズ」にしたいし、出資比率でも私たちが主導権を握りたい。
なぜなら、一番リスクをとっているのも一番働いているのも私たちだから。
とにかく自分たちのやりたいことを素直に伝えることです。相手側に「こいつ、アホだ」と思われたこともあったかもしれません。
とにかく、わからないことがあれば、その場で徹底して聞きました。あまりにしつこいので、こちら側のやる気も自然に伝わったんだと思います。最終的に「南場さんがいうならそれが一番いいよ」と理解してくれました。
ビジネスの第一線で活躍する人たちは、モチベーションがいかにビジネスの成否を左右するかを知っているんですね。
(07年6月18日号 当時・社長 文=大宮冬洋)
奈良雅弘氏が分析・解説
南場氏の事例は、相手との関係性を変容させることで、相手の主体性を引き出し、束ねようと試みるもので、「関係アプローチ」と呼ぶべきものである(「束ねる」とはニュアンスが少し違うが、情熱がしだいに関係を変容させる点で)。
「束ねる」にまつわる失敗例を見ると、人間関係ができていない中で、強引に自分の主張を押しつけ、相手の反感を買って何も動かなくなってしまったという場合が非常に多い。
対して成功例では、信頼関係をつくってから事を進めたケースが多い。「この人は嘘を言わない」という認識が相手にあれば、受けとめ方は好意的になり、成功の可能性も高くなる。
アール・アンド・イー合同会社代表 奈良雅弘
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。