もっとも、毎月数冊の課題図書を読み込み、レポートを作成するなど学習の中身はハードである。

受講者はまず、独自編集のテキストや書籍をもとに年間約50時間の遠隔授業を受ける。受講後、塾生はパソコンからインターネット上の掲示板である「エアキャンパス」にアクセスし、講義内容やテーマに関してディベートを繰り返す。

「私自身は、あまり出来のいい生徒ではなかったと思います。ただ、中国やインドなどアジアの急成長地域について勉強させていただいたことは、非常に役立っています」

と原島は振り返る。

原島自身、中国をはじめとする新興国の専門家だ。しかし、

「ビジネスに追われていますから、体感的なところでは理解していても理論づけて考える習慣はありませんでした。その点、大前先生はそれぞれの国のマーケットについて客観的に分析していますから、たいへん勉強になりましたね」

エアキャンパスを通じた異業種の塾生との触れ合いにも、大いに刺激を受けたという。

「いろんな方がいて、いろんな角度の見方をされるんだなと実感しました。大塚化学のように歴史のある会社で過ごしていると、つい視野が狭くなって、多様な見方ができなくなっていることがあります。これから世界で戦っていくには、違う観点からも物事を見る必要があると思います。大塚ホールディングスはいま人事のダイバーシティを進めているのですが、私たち(大塚化学)もこのほど初めて外国人を執行役員に任命しました。中国の仕事で私と一緒に汗を流した中国の方です。今後は、女性や外国人といった多様な人たちをどんどん登用していきたいと思います」

原島は力強く、こう語るのである。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐美雅浩、永野一晃、的野弘路=撮影)