セブン-イレブン・ジャパンでは従業員の接客指導は個々の加盟店のオーナーに任せていたが、2011年6月から従業員のレジ接客研修をはじめた。対象は毎月約1000人。加盟店の経営アドバイザーであるOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)が、加盟店のオーナーや各店のリーダーとなっている従業員に接客の基礎を教えている。1回の研修は、約6時間30分。修了した従業員には、金色のネームプレートが渡される。

現場のリーダーに模範になってもらうだけではなく、OFCが行う指導をオーナーが間近に見ることで、他の従業員の指導に活かして店舗全体の接客技術の向上を図る狙いがある。

接客指導のポイントは5つ。「身だしなみ、あいさつ、お辞儀、言葉づかい、笑顔」と森永さんは指を折る。

「お客さまへの感謝がしっかりと伝わる、目に見える接客の大切さを知ってほしいんです」

視覚に訴える“目に見える接客”で重視しているのが、お辞儀だ。研修では、客が入店したとき「いらっしゃいませ」とへそのあたりで手を組み、30度の角度で3秒間、お辞儀する練習を行っている。

ある店舗のオーナーは、混雑時に急いでいる客のために、もっとも重視すべきサービスは、スピードと効率だと考えていた。客を待たせない――その考え自体は間違いではないだろう。しかしレジ接客研修後、気づきがあった。スピードと効率を重視するあまり、お客さまへの感謝を形にすることを疎かにしていなかっただろうか、と。

お辞儀を重視する接客に取り組んだ結果、変化はすぐに表れた。その店舗でスピードや効率をどんなに上げても減らなかったクレームが目に見えて減少したのだという。