「接客力」という一本の軸で、企業を評価したらどうなるだろうか……。プレジデント誌では約1000人を対象にアンケートを実施。そこから、接客力と業績の深い関係が見えてきた。
小売店部門
スーパー、コンビニ、百貨店、各種専門店(家電、インテリア、雑貨、ファッション、衣料・靴、薬、本・音楽・ビデオ、携帯ショップ、ホームセンター、キッズ・ベビー用品、カー用品、ガソリン、メガネ・時計、写真、リサイクル)など
家電、ファッション、あるいはファストフード……。店頭に並ぶ商品の質、デザイン、価格は昔に比べれば均質化してきた。差別化を図るとすれば店頭での商品情報の提供、接客といったサービスを充実させるしかない。接客サービスと従業員のコミュニケーション能力が問われる時代となったのである。
今回、プレジデント誌では約1000人の方に、小売店、飲食店、その他サービス業について、接客力が高い会社、低い会社を自由回答で答えていただいた。それを集計したランキング(表を参照)だ。
結果を見渡して言えることがある。それは、接客サービスの評価が高い会社はいずれも企業イメージがよく、業績がいい企業だということ。接客力が業績に与える影響は大きいようだ。
「神様が降臨してきたのか?」
小売店部門では、1位が伊勢丹、2位が高島屋となり、5位に三越、6位に大丸が入るなど、百貨店のサービスは高く評価されているという結果が出た。
個人的体験だが、私はエルメス社の幹部と一緒に日本橋の某百貨店に行ったことがある。開店直後のことだ。荘重な音楽が流れるなか、私たちが歩いていくと売り場にいた従業員はいっせいに頭を下げた。
エルメス幹部は言った。
「おい、いったい、どうしたんだ。オレたちを王様と思っているのか? それともいま、この場に神様が降臨でもしてきたのか?」
幹部は理解できないといった表情で、肩をすくめた。
日本の百貨店の接客サービスは突出している。丁寧すぎるほどだ。世界のどの国でも、こうした開店儀式をやっているところはない。世界基準から見れば過剰とも言える接客サービスが要求されているのだ。もちろん、百貨店の商品の価格を考えれば、ある程度サービス水準が高いのは当然ではあるのだが。
3位に入ったイトーヨーカ堂の評価も高い。同社は2012年ごろから接客重視にかじを切っている。ユニクロも評価が高い。同社は一部では社員の仕事量が多いとの批判もあるが、顧客の評価を得るには、ある程度社員にプレッシャーがかかるのはやむを得ないのだろうか。
メガネ専門店「眼鏡市場」の評価の高さも目を引く。同社は静岡に研修センターを設けるなど、「接客品質」の向上に努力しているようだ。評価する理由として「要望への対応」を挙げた人の割合が突出して高かった。百貨店的な接客で評価されたわけではないようだ。