トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。

“漢字”を減らし“ひらがな”を多用する

「まず、基本に立ち返りましょう。人はなぜ『話す』のですか?」

西任暁子さんがそういって、にっこりと微笑んだ。質問のテーマは組織内の意思伝達。正式には文書による指示や報告が必要であるにしろ、スムーズに意思を伝えるには、対面して「話す」というプロセスが大事である。そのとき、私たちは何に気をつけるべきか。スピーチトレーナーの西任さんに尋ねたところ、冒頭のような問いが返ってきた。

「伝えたいから、ですよね」
「そうです。自分が何か思っていること、感じていること、考えていることを伝えたいから話すのです。それには相手が『聞き取れる』こと、『意味がわかる』ことが重要です」

西任さんが推奨するのは「ひらがなで話す」ということだ。まずは音が重ならないように、一音ずつ発声する。そうすれば相手が「聞き取る」ことは可能である。

しかし日本語には、表意文字である漢字で構成された単語が少なくない。同音異義語も多いため、そのまま理解できるとは限らない。

「私の姓は珍しいので、初対面の人には必ず『どんな字を書きますか』と聞かれます。説明してはじめて『ああ、西任さんですか』と納得してもらえます。つまり、話を聞くということは、頭の中で常に言葉を漢字に変換し続けるということです」

伝わりやすくするためには、漢字に変換する手間は少ないほうがいいに決まっている。だから「ひらがなで話す」ことが重要なのだと西任さんはいう。一例をあげよう。

「視覚、悲報、分解」
「目で見る、悲しい知らせ、分ける」

前者と後者とを比べると、視覚的に意味を把握しやすいのは前者だが、話し言葉では、後者のように「ひらがな用語」を多用したほうが聞き手の頭に入りやすい(西任暁子著『「ひらがな」で話す技術』より)。そこに気をつけるだけでも、わかりやすく話すことはできるのだ。